351MHz帯のデジタル簡易無線(登録局)が35chから97chへ増波され、気になるのが旧タイプで免許を受けた物の対応。
ユーザー側からしたら、メーカーが改造をしてくれたら…と思うのだろうが、実際には可能なのか。
巷の情報をまとめた上で、こちらの見解も記しておきます。
総務省では改修された場合の申請を想定している
電波利用ホームページを確認すると、ソフトウェア及びハードウェアの改修した機器での申請を想定しており、申請方法が告知されています。
やるやらないはともかく、メーカーがソフトウェア・ハードウェア改修するのを想定しているからなのでしょう。
同サイトには、色々なパターンが示されているが、好きものでない限りは大抵持っている無線機は1~2台がいい所ではないかと思います。
そのことを踏まえて、多くの人において可能性のあるものは、「増波前の簡易無線のすべてを増波後の簡易無線に交換」(無線機を買い替え)でしょう。
【増波前の簡易無線のすべてを増波後の簡易無線に交換】
・既存包括登録の変更申請
・登録局変更届出
増波前の簡易無線のすべてをソフトウェア改修で増波した場合でも、電波の質が変わるという理由のため、技適、もしくは工事設計認証を取り直さなければなりません。
そうなると、技術基準適合証明番号が変わるため、無線機を買い替えたのと同じ方法となるのです。
メーカーの思惑
まずは、いち早く公式発表しているアルインコの場合は次の通り。
- 30chのデジタルトランシーバーは82chに拡張してもらえるの?
-
弊社ではそのようなサービスは行っておりません。
デジタル簡易無線を含む無線機器は認証機関から技術基準適合証明を受けなければ使用できません。登録局3Rの82ch(3T)への改造は周波数の拡張という重要なスペックの変更ですから別技適の取得が必要になります。新品で製造するDJ-DPS70EやDR-DPM60Eなどの技適番号とは共用することができません。検査を含む技適取得費用は新品の簡易無線機が何台も買える額で、CSMも取得し直しになりますが、これにも費用と手間が発生します。さらに弊社の手数料を加えると、時間、手間、費用、すべてが非現実的になるためです。
通信技術[電子事業部]|総合FAQ(よくあるご質問)|ALINCO – アルインコ
まぁ、当然でしょうね。
「検査を含む技適取得費用は新品の簡易無線機が何台も買える額」とは??という人もいるかも知れないけれど、メーカーとて会社なので、人を使うためコストが掛かってしまう。
人が動くたびに、「チャリン」と工数=コストが掛かる仕組みなのです。
その辺を理解してあげないと、「検査なんてすぐできるでしょ。技適の申請費用だけだったら、無線機1台分でいけるはず…」などととんでもないことを妄想してしまうでしょう。
さらに技適の申請費用も業者によっては、べらぼうに高い所もあるので(テレックが一番安価であるのはいうまでもない)、「検査を含む技適取得費用は新品の簡易無線機が何台も買える額」というのは、まんざら嘘ではないです。
メーカーが利益を上げるのは当然のことで、慈善団体ではない。
それに、「お客様は神様です」…なんて言葉はとうの昔の話。
メーカーの立場があることも理解し、高圧的に無理なお願いをするようなクレーマーにはならないようにしたいものです。
他メーカーもユーザーから何件も要望は聞いているでしょうが、対応に関しては後ろ向きであるのは間違いなく、あまり期待し過ぎない方がよいでしょう。
もし対応してくれたらラッキー…程度に。
使うユーザーは一杯遊び場が増えるのでラッキーと思うのだが、メーカーからすると、周波数が増波されるとはつゆ知らずで、周波数が増える度に無駄なコストが増えてくるので、ある意味迷惑千万なのです。
一部メーカーでは、現行機種と同名で新規に技適・工事設計認証を取得している事例もあり、今後の動向に注目が集まるところ。
ちょちょいのちょいで改修できるのか?
巷ではソフトウェアを改修するだけで、ちょちょいのちょいで周波数増波できるのではないかという話がチラホラ。
私の見解はこう。
恐らく、高い確率でソフトウェア改修のみで周波数の増波ができるはず(他の人と同じじゃんか(^o^;A)。
この先は、妄想で書いていることなので、正しくないかも知れません。
その旨ご容赦を!
ソフト改修だけでできる(と思われる)理由その1
VCOが極帯域なものであった場合は、いくらソフトウェアを改修したとしても、VCO自体を変更しなければ無理。
しかし、旧機種と言えども、新周波数までカバーできないような狭帯域なVCOを使っているとはとても思えません。
なぜなら、近隣の周波数を使う業務無線機もあるだろうから、デジタル簡易無線もそれらと部品の共通化を行っていても全くおかしくはなく、それらと部品の共通化を行っているとすれば、VCOが旧周波数のみしかカバーできないような狭帯域なものであるとはとても考えにくいのです。
ソフト改修だけでできる(と思われる)理由その2
一から開発すると時間もコストも掛かるため、旧機種と中身を同じにして、ソフトウェアで対応するのが一番開発コストが掛からないという判断はどのメーカーもしているはず。
通常であれば、それなりに開発期間が掛かるのに、各社が早々に増波対応品を出せてしまうのは、ソフトウェアで対応できてしまうからに他なりません。
メーカーの本音は…
メーカーとしては、ユーザーに買い替えてもらう方が自分達の利益となるので一番いいし、もし、改修をするのであれば、かなりの費用(人件費)が掛かるので、やりたくないというのが本音でしょう。
今後救世主は登場するか?
理想的なことを言えば、救世主が現れて、市民ラジオのように誰かが旗振り役となり、数を取りまとめて技適を取れば、費用としては安くできるでしょう。
しかし、市民ラジオと違い、全メーカーはマイコンを使っているため、肝心なソフトウェアの方はどうするの?という話もあります。
メーカーからソフトウェアを含めた資料が提供されることはまずないと考えられるし、そう考えると敷居はかなり高い。
利益を度外視し、情熱を持って、全て行ってくれる人の登場に期待したいところ。
救世主のためのToDoリスト
果たして現れるか分かりませんが、救世主がすべきことのToDoリストをまとめたので、参考にしてください。
回路を解析し、技適の申請に使うためのブロック図を完成させる。
同時に、回路の動作を解析し、どのようなプログラムにしたらよいか検討。
マイコンを調査し、ワンタイムマイコンであった場合は、マイコンの置き換え+回路変更が必要。フラッシュマイコンだった場合は、対応するマイコンの開発ツールを用意し、ガシガシとプログラムを作っていく。
プログラミングが完了し、動作するようになったら、念のため、技適に通るかどうか、測定器で確認する。
申請書類をまとめ、認証機関に申請を行う。場合によっては、認証機関と打ち合わせを行う。
認証機関に機械を持ち込んで、試験を行う。
以上でミッション完了。あとは、総務省に申請するだけ。