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技適未取得機器の特例制度|180日ルールの実像と手続きを無線技術士が解説

技適未取得機器を用いた実験等の特例制度(180日ルール)を無線技術士が解説する記事のアイキャッチ

海外の技適マークが付いていない無線機器を、日本で合法的に試す方法があります。

「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」、通称「180日ルール」です。

届出を出せば、技適が無くても使えるようになるってこと?

そういう制度です。

ただし条件があります。

  • 対象になる無線設備の規格が決まっていること
  • 日本の技術基準に相当する外国の基準に適合していること
  • 使えるのは届出の日から180日まで

そしてこの記事でいちばんお伝えしたいのは、2025年1月に手続きの入口が変わったということです。

以前の「Web届出システム」は無くなり、「電波利用電子申請」に統合されました。

しかも、それ以前に取得したアカウントは使えません

前に作ったIDが使えないの?

使えません。

取り直しになります。

ここが最初の関門です。古い解説記事のとおりに進めようとすると、ログインの時点で止まります。パスワードが合っていても通りません。

この記事では、第一級陸上無線技術士の私が、総務省が出している一次資料をもとに、この制度の実像を整理します。

手順をなぞるだけの記事は他にもあります。

ここでは、そもそもこの制度をあなたが使うべきなのかを判断できる材料をお出しします。

記事を書いた人

【きのぴぃ】

  • CB免許廃止前にサイタマAD720/AE215のコールサインを取得。〇〇年にわたり細々と無線活動中。
  • 電気工事士・第一級陸上無線技術士などの資格を持ち、電気・無線が得意です。
  • 電波新聞社 月刊「ラジオの製作」元ライター フリーライセンス無線を主軸にガジェット記事を執筆
  • 電波新聞社 アマチュア無線受験マニュアル企画記事担当
  • マガジンランド 月刊「Let’s HAMing」元ライター

目次

【結論】2025年1月に手続きが変わった。前のアカウントは使えない

技適の特例制度が2025年1月に電波利用電子申請へ統合され、令和6年12月31日以前のアカウントが使えなくなったことを示す図解

まず、いちばん実害の出やすいところから書きます。

この制度の届出は、以前は「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度 Web届出システム」という独立したサイトで行っていました。

そのシステムは、2025年1月に「電波利用電子申請」へ統合されています。

統合とは。それまで別々のサイトに分かれていた4つのシステムが、「電波利用電子申請」という一つの入口にまとめられたことを指します。

総務省の電波利用電子申請のトップページには、統合前の対象として次の4つが挙げられています。

  • 電波利用 電子申請・届出システム
  • 電波利用 電子申請・届出システム Lite
  • 技適用 電波利用 電子申請・届出システム
  • 技適未取得機器を用いた実験等の特例制度 Web届出システム

そして同じページに、こう書かれています。

総務省 電波利用電子申請

令和6年12月31日以前に取得されたアカウントはご利用いただけません。新たにアカウントを発行していただく必要があります。

つまり2024年中に作ったアカウントは、そのままでは使えません

ネット上には旧システムを前提にした解説が今も大量に残っています。

そのとおりに進めようとすると、入口の時点で止まります。

古い記事を見ながらやると詰まるんだね

私は同じ電波利用電子申請で、デジタル簡易無線の包括登録を実際に手続きしました。

そのときの実感を含めて、後の章で入口の話を詳しくお伝えします。

特例制度とは|180日だけ技適なしで使える枠

技適未取得機器の特例制度は届出の日から180日・手数料0円・同じ規格と目的での単純な再延長は不可であることを示す図解

制度そのものを整理しておきましょう。

まずは制度の輪郭から押さえていこう。ここが分かると、後の判断がぐっと楽になるよ。

日本国内で電波を出す無線設備は、原則として技術基準適合証明などを受けている必要があります

その証がいわゆる「技適マーク」ですね。

ところが、海外から取り寄せた開発ボードや試作機には、これが付いていません。

持っているだけなら違反ではありません。問題になるのは電源を入れて電波を出した瞬間です。技適マークの無い機器は、日本では「所持は自由・運用は違法」という状態に置かれます。

そのまま電波を出せば電波法違反になります。

そこで設けられたのが、この特例制度です。

いつからの制度か平成30年度の規制改革提案を受け、令和元年5月より導入
使える期間届出の日から180日以内
手数料なし
誰が使えるか法人・個人のいずれも届出可能
複数台は同規格の機器なら一つの届出で複数台可能
延長は同じ規格・目的での単純再延長は不可(異なる規格・目的なら別途届出可能)

出典は総務省が2026年3月に公表した資料です(この記事の各所で使います)。

ここで見落とされがちなのが、いちばん下の行です。

同じ規格・同じ目的で、180日を単純に延長することはできません。

じゃあ181日目からはどうするの?

そこが本当の問題です。

この記事では専用の章を立てて、選択肢と費用を並べます。

届出に書く内容

届出そのものは難しいものではありません。

書く項目そのものは6つだけ。身構えるほどのものじゃないよ。

総務省の資料には、届け出る内容として次が挙げられています。

  • 氏名・住所等の連絡先
  • 実験等の目的
  • 無線設備の規格
  • 設置場所
  • 運用開始予定日
  • 相当基準適合の確認方法

最後の「相当基準適合の確認方法」が、この制度の肝です。

技適が無くても何でもよいわけではなく、日本の技術基準に相当する外国の基準に適合していることが前提になります。

具体的には、欧州のCEマークや米国のFCC認証などですね。

相当基準適合とは。日本の技術基準に「相当する」外国の基準に適合していることを指します。CEマーキング(欧州)やFCC認証(米国)が代表例です。

「確認方法」を書かせているところが、この制度の要

届出の6項目のうち、5つは事実を書くだけです。

連絡先も、目的も、設置場所も、開始日も、迷うところはありません。

迷わない5項目。氏名・住所等の連絡先/実験等の目的/無線設備の規格/設置場所/運用開始予定日。ここまでは手元の事実を書き写すだけです。

ですが最後の1つだけは違います。

「どうやって適合を確認したのか」を、届け出る側が示さなければなりません。

ここで話を終えている解説が多いのですが、実際の画面はもう一歩具体的でした。

ここは実物を見たほうが早いよ。私が届出の画面を開いてみた。

技適特例の届出画面にある「技術基準に適合する事実の確認方法」の選択肢2つ。表示による確認と無線従事者による確認

自由記述ではありませんでした。

用意されているのは、次の2つの選択肢だけです。

無線設備本体や取扱説明書、パッケージの表示により、次の全ての内容を確認しました。
・当該技術基準に適合している旨(規格名などの記載がある)
・外国の法令により確認されている旨(認証マークなどの記載がある)
無線従事者免許証を持つ者(無線従事者)が、当該技術基準及び電波法の技術基準に適合する旨を確認しました。

①は「表示を見て確認した」という道です。

ここで見落とされがちなのが、2つの記載が両方そろっている必要があるという点です。

販売ページに「CE認証取得」って書いてあれば大丈夫?

それだけでは足りません。

認証マークがあっても、規格名の記載が無ければ①の条件はそろわないからです。

そもそも根拠にしようとしているCEマーキングにも、知っておきたい性質があります。

「CE」の文字だけでは根拠になりません。自己適合宣言は、メーカー自身が「基準を満たしている」と宣言する仕組みです。宣言の正しさを第三者が保証しているわけではありません。

欧州のCEマーキングは、無線機器についてはメーカーによる自己適合宣言が基本です。

第三者機関が全数を審査しているわけではありません。

表示を鵜呑みにせず、適合宣言書や試験報告書といった書類まで見ておきたいところです。

じゃあ、表示が足りない機器はもう無理なの?

もうひとつの道は「無線従事者が確認した」

そこで出てくるのが選択肢②です。

ただしこちらは、①の代わりに気軽に選べる道ではありませんでした。

総務省の公式ガイドが、想定する場面をはっきり書いています。

総務省 電波利用電子申請「開設届出について」

自ら無線機器を製造しているメーカーが技適申請中に試験を行うような場合:無線従事者(次の資格に限る…)の免許を持つ者が、相当技術基準に加えて、無線設備規則に適合している旨を確認することで、特例制度を利用することができます。

想定されているのはメーカーが技適の申請中に試験を行うような場面です。

しかも、確認する内容が①より重くなります。

相当技術基準に「加えて」、無線設備規則に適合している旨まで確認する必要があります。

資格の重さがそのまま責任になるところ。軽い気持ちでは選べないよ。

使える資格も、次のとおり限定列挙されています。

  • 第一級・第二級・第三級総合無線通信士
  • 第一級・第二級・第四級海上無線通信士
  • 航空無線通信士
  • 第一級・第二級陸上無線技術士
  • 第一級陸上特殊無線技士
  • 第一級アマチュア無線技士

第三級海上無線通信士や第二級以下のアマチュア無線技士は入っていません。

逆に第一級アマチュア無線技士が入っているのは、意外に思われるかもしれませんね。

私は第一級陸上無線技術士なので、この②を選べる立場にあります。

そのうえで申し上げます。これは資格を持っていれば軽く選べる選択肢ではありません。②を選ぶと、届け出る項目が4つ増えます。

  • 当該無線従事者の氏名
  • 当該無線従事者の免許証の番号
  • 確認した法第三章に定める技術基準の別
  • 当該無線設備の工事設計

3つ目の「法第三章に定める技術基準の別」が、規格の一覧のいちばん下にあった項目の正体です。

詳しくは令和元年総務省告示第265号に定められています。

工事設計まで出すとなると、実質的にはメーカー側の手続きですね。

届出画面の注記

※ 選択した内容を、ご自身の意思で記入したものとして、総務省に届け出ます。

②を選ぶことは、実際に技術基準への適合を確認したという意思表示です。

確認していないのに選ぶことはできません。

届出は自己責任で出すものであって、総務省がお墨付きを与える仕組みではないからです。

この制度が向かない人
  • 本体にも取説にもパッケージにも、規格名と認証マークの記載が無い(=①を選べない)
  • 販売ページの表記だけを根拠にしたい
  • 180日を超えて常用したい

どちらの道も取れないなら、この制度には手を出さないほうが安全です。

その機器、本当に技適が無いですか|表示は3通りある

技適マークの表示方法が直接表示・本体のディスプレイ・外部ディスプレイの3通りあることを示す図解

届出の話に進む前に、確かめておきたいことがあります。

その機器、本当に技適が付いていないかな。ここを確かめずに届出を出す人がけっこう多いんだ。

本体をいくら探しても技適マークが見つからない。

だから技適が無い機器だ。

この判断が、けっこう外れます。

え、本体に無くても技適があることがあるの?

あります。

表示の方法が3通り認められているからです。

表示は「本体」だけではない

証明規則第20条第1項は、技適マークの表示方法を3つ認めています。

1号無線設備に直接表示(見やすい箇所)
2号本体のディスプレイによる表示
3号外部ディスプレイによる表示

2号と3号は、いわゆる電子ラベルです。

スマートフォンの「設定」の奥に技適マークが入っているのを見たことがある方もいるでしょう。

実際に開くと、こうなっています。

私のiPhoneで開いてみたよ。「法律に基づく情報および認証」というところ。

iPhoneの設定「法律に基づく情報および認証」画面に電子ラベルとして表示された技適マークと認証番号

Japanの欄に、技適マークと認証番号が並んでいます。

本体のどこを探しても見つからないものが、画面の中に入っているわけですね。

ⓇとⓉは別物です。Ⓡが電波法の技適マーク。Ⓣは電気通信事業法の技術基準適合認定で、電話回線につなぐための別制度です。並んで表示されるので混同しやすいところです。

同じ欄には「5GHz(W52, W53)は屋内使用限定」という趣旨の但し書きも入っていました。

この話は対象設備の章でもう一度出てきます。

3号にいたっては、機器本体にディスプレイが無くても、つないだ外部ディスプレイに表示すればよいという扱いです。

開発ボードでも確認する価値があります。画面を持たない機器でも、つないだ外部ディスプレイ側に技適マークを表示する設計が認められています。本体だけを見て「無い」と決めないでください。

開発ボードのように画面を持たない機器では、ここを確認しないと判断を誤ります。

「小さすぎて見えない」も理由になる

もうひとつ、見落としの原因があります。

技適マークの大きさについて、総務省の資料はこう書いています。

技適マークの大きさ等

「表示を容易に識別することができるものであること」(直径3ミリメートル以上の規制は撤廃済み)

直径3mm以上という決まりは、もうありません。

IoT機器の小型化に合わせて緩和されたためです。

つまり、肉眼では追いきれないほど小さい技適マークが正規に付いていることがあります。

そんなに小さいと、探しようがないんだけど…

ルーペで見る価値はありますね。

技適マークの読み方

工事設計認証を受けた機器の技適マークは、こういう形をしています。

技適ロゴ + (Rを□で囲む)+ 認証番号
表記例R XXX-YYYYYY
認証番号の前半登録証明機関の区別
認証番号の後半6文字のアラビア数字もしくは英字、またはその組み合わせ
デジタル簡易無線機IC-DPR3の銘板に直接表示された技適マークと認証番号001TVAB

私が持っているデジタル簡易無線機のラベルです。

技適マークの右に、Ⓡと認証番号が続いているのが分かります。

機器認証番号認証した登録証明機関
デジタル簡易無線機
IC-DPR3
001TVAB…一般財団法人
テレコムエンジニアリングセンター
Wi-Fiルーター
NEC Aterm WX3000HP
003-190222株式会社ディーエスピーリサーチ
iPhone003-210186株式会社ディーエスピーリサーチ

原則として、一つの認証工事設計に一つの認証番号が定められます。

手元の3台を並べると、前半の数字が「001」と「003」に分かれているのが見えますね。

ここが認証した登録証明機関の区別で、後半が個々の認証を表します。

番号の前半は機関、後半は認証。「001」は一般財団法人テレコムエンジニアリングセンター、「003」は株式会社ディーエスピーリサーチです。Wi-FiルーターとiPhoneが同じ「003」で始まるのは、同じ機関が認証したからですね。

登録証明機関は、総務大臣の登録を受けた法人です。

総務省の一覧では16法人が登録されており、番号と機関名の対応もそこで確認できます。

手元の機器を見れば、どこが認証したか分かるんだ

認証番号が読めれば、中身まで確認できる

ここが実務では効きます。

登録証明機関が認証すると、その情報は総務省の電波利用ホームページで公示されます。

番号さえ読めれば、その機器が何をどれだけ出せるのかまで追えるよ。

認証番号で検索すると、次のことまで分かります。

  • 認証取扱業者名
  • 無線設備の種別
  • 特定無線設備の型式または名称
  • 電波の型式、周波数および空中線電力
  • 認証日 など

「技適マークらしきものは付いているが、本物か分からない」というときの決め手になります。

番号を引いて出てこなければ、そのマークは疑ってよいわけですね。

組み込み製品と、小さすぎる機器の扱い

例外的な表示も認められています。

例外は2つ。無線モジュールを組み込んだ製品への同一表示と、本体への表示が困難な場合の代替表示です。

技適マークが付いた無線モジュールを組み込んだ製品には、その表示と同一の表示を製品側に付すことができます

また、本体への表示が困難または不合理な場合は、取扱説明書と包装または容器への表示が認められます。

総務省のFAQでは、体内に埋め込む装置や耳の中に入るイヤホンなどが例として挙げられています。

イヤホンなら、確かに貼る場所がないね

ここで注意したいのが、次の一文です。

電波利用ホームページ FAQ より

「取扱説明書及び包装又は容器」への表示とする場合は、取扱説明書への表示だけでなく包装又は容器の見やすい場所への表示も(「取扱説明書」と「包装又は容器の見やすい場所」の両方に表示が)必要です。

取扱説明書だけでは足りません。

両方に必要です。

なお、車両などに組み込んで見えなくなる場合でも、本体に表示できるなら本体への表示が原則とされています。

中古品を買うときにも効きます。本体に見当たらなくても、取扱説明書と箱の両方に表示があれば正規の表示です。箱を捨てる前に確認しておくと安心でしょう。

ここまで確認して、それでも技適マークが見つからない。

そのときにはじめて、特例制度の出番になります。

何が使えて、何が使えないか

特例制度の対象になる5GHz帯無線LANのW52・W53・W56について屋内利用と屋外利用の可否を比べた図解

対象になる無線設備は決まっています。

ここは意外と厳密なところ。対象外の機器は、どう頑張っても届出できないよ。

「技適が無い機器なら何でも」ではありません。

無線LANとBluetoothは周波数帯で扱いが違う

2.4GHz帯5GHz帯6GHz帯
無線LAN
Bluetooth

△には「周波数帯や出力、利用場所等の制限あり」と注記されています。

5GHz帯の無線LANは、気象レーダーや衛星通信と周波数が近接しています

この「制限」が具体的に何なのかは、実は手元の製品に書いてあります。

Wi-Fiルーターをひっくり返してみて。銘板にちゃんと書いてあるよ。

Wi-FiルーターNEC Aterm WX3000HPの銘板に印刷された技適マークと「W52/W53は屋内使用限定」の表記

私が使っているルーターの銘板です。

ほんとだ、W52・W53・W56って書いてある

W52・W53・W56 と並んだすぐ下に、「W52/W53は屋内使用限定」と印刷されています。

ただし総務省の一覧を見ると、もう少し細かく分かれていました。

周波数帯屋内利用屋外利用
2.4GHz帯
5.2GHz帯(W52)△ 条件付
5.3GHz帯(W53)×
5.6GHz帯(W56)
6GHz帯VLP(EIRP25mW以下)のみ○

5.2GHz帯の屋外利用は、「×」ではなく「△=条件付」でした。

条件は5.2GHz帯高出力データ通信システムの基地局などに限られ、事前に総合通信局へ「登録局」の手続きが要ります。

使える場所も、総務省告示に示された「開設区域」の中だけです。

銘板の表記と矛盾しません。手元のルーターのような一般の無線LAN機器では、W52もW53も屋内限定です。屋外が開くのは登録局の手続きを踏んだ専用システムの話で、家庭用の機器を外に持ち出してよいという意味ではありません。

では、なぜここまで細かく分かれているのでしょうか。

総務省はこう書いています。

総務省 電波利用ポータル「無線LANの屋外利用/上空利用について」

5.2GHz帯は、衛星通信システムのフィーダリンクと周波数を共用しています。また、隣接周波数帯に気象レーダーが使用しています。

5.2GHz帯は衛星通信のフィーダリンクと共用し、そのすぐ隣に気象レーダーがいます。

そして5.3GHz帯そのものが、気象レーダーの帯域です。

だから5.3GHz帯と5.6GHz帯には、屋内・屋外を問わずDFS機能の具備が必須とされています。

DFSとは。気象レーダーや航空レーダーの電波を検出したら、無線LAN側が通信を止めて別のチャンネルへ自動で移る仕組みです。対象はW53とW56だけで、W52は含まれません。移る前にチャンネルが空いているかを確認するため、ルーターメーカーの解説では、この確認に1〜10分かかる場合があるとされています。

「5GHzは屋外で使えない」とひとくくりに覚えていると、ここでつまずきます。

「△」は使えないという意味ではありません。周波数帯・出力・利用場所に制限が付く、という意味です。届出の前に資料の注記を必ず確認してください。

そしてこの区別は、届出の画面にそのまま出てきます。

「屋内/屋外の別」が必須項目として用意されているからです。

Wi-FiとBluetooth以外にも対象がある

意外と知られていませんが、対象はWi-FiとBluetoothだけではありません。

  • 特定小電力無線局(テレメータ用/テレコントロール用/データ伝送用/移動体識別用RFID/60GHz帯移動体検知センサー用/ミリ波レーダー用)
  • 60GHz帯小電力データ通信システム(Wi-Gig、ゲームコントローラー等)
  • デジタルコードレス電話
  • 5.2GHz帯高出力データ通信システムの陸上移動局

スマートメーターの検針、電子タグ、車載レーダー、スマホのジェスチャー制御。

このあたりを開発している人にとっては、使える幅が思ったより広いはずです。

逆に、対象に入っていないものは?

上の一覧に無いものは、この制度では使えません。

携帯電話の周波数帯や、アマチュア無線、業務用の無線機などは別の枠組みになります。

届出画面の選択肢は、資料よりずっと具体的だった

資料では「無線LAN」「Bluetooth」という括りでしたが、届出の画面では規格名で選びます

ここは資料を読んでいるだけでは分からないところ。実際の一覧を見てみよう。

技適未取得機器の届出画面で選ぶ無線設備の規格の一覧。Wi-Fi・Bluetooth・Zigbee・LPWAなど

一覧から該当するものを選ぶ形で、複数選択もできます。

分類一覧に用意されている規格
Wi-FiIEEE802.11a/b/g/n/ac/ax/ad(WiGig)
BluetoothVersion 2.1/3.0/4.0/4.1/4.2/5.0/5.1/5.2
Zigbee(2.4GHz帯)IEEE802.15.4
LPWA(920MHz帯)ARIB STD-T107/T108/LoRaWAN AS923/Sigfox RC3/Rec.ITU-T G.9959/IEEE802.15.4g/ETSI TS 103 357 LFour family
デジタルコードレス電話XGP Forum Document A-GN6.00/ARIB STD-T101
ミリ波レーダーETSI EN 302 264/ETSI EN 303 360
その他電波法第三章に定める技術基準

ZigbeeとLPWAが独立した分類として並んでいるのが目を引きます。

920MHz帯のLPWAは、資料では「特定小電力無線局(データ伝送用)」の中に埋もれていました。

画面では LoRaWAN や Sigfox といった規格名まで指定されているわけですね。

IoTの開発をしている方は、ここを見てください。「Wi-FiとBluetoothだけの制度」と思って諦めていた920MHz帯のLPWA機器が、はっきり対象に入っています。

ここで、多くの人がつまずくであろう点に触れておきます。

この一覧では、Wi-Fiは IEEE802.11ax まで、Bluetooth は Version 5.2 までしかありません。

Wi-Fi 7(IEEE802.11be)やBluetooth 5.4 の機器は、すでに市販されていますね。

じゃあ最新の機器は届け出られないの?

届け出られます。

総務省は、一覧に無い規格のための書き方を公式ガイドに用意していました。

規格の選択欄では近い規格を選び、実験等の目的欄の冒頭に角括弧で書き足すという方式です。

使いたい規格規格の選択欄実験等の目的欄の冒頭
IEEE 802.11be(Wi-Fi 7)IEEE802.11ax を選択【11be含む】
Bluetooth 5.3 / 5.4Bluetooth Version5.2 を選択【Bluetooth5.3】 または 【Bluetooth5.4】
6GHz帯 Wi-Fi【VLP】 または 【LPI】(両方使うなら両方)
IEEE 802.11ah(920MHz帯)ARIB STD-T108 を選択【11ah含む】 または 【11ahのみ】

いずれも令和元年総務省告示第264号の条件に適合していることが前提です。

また、複数の規格に対応する機器は「対応する規格のうち最新の規格のみを選択」とされています。

a/b/n/ac/ax に対応する機器なら、axだけを選ぶわけですね。

ここは画面を見ているだけでは分かりません。チェックボックスに自分の規格が無いと「対象外だ」と思ってしまいますが、実際には公式ガイドに書き方が用意されています。最新機器を扱う人ほど、ここを取り逃がしやすいところです。

なお、携帯電話事業者が提供するLTE・4G・5Gは、この手続きでは使えません。

ただしSIMカードを挿さず、その機能をオフにした状態で、一覧の範囲内の規格として使うなら届け出られます。

この制度は実際どれだけ使われているのか

技適未取得機器を用いた実験等の特例制度の届出件数が令和元年85件から令和6年2,170件へ増え、令和7年は1,833件に減ったことを示すグラフ

ここからが、他ではあまり見ない話になります。

この制度が実際どれだけ使われているか、数字で見たことのある人は少ないと思う。

総務省が2026年3月に公表した資料に、届出件数の年次推移が載っています。

届出件数
令和元年85件
令和2年656件
令和3年973件
令和4年1,179件
令和5年1,681件
令和6年2,170件
令和7年1,833件

制度が始まった令和元年は85件でした。

そこから毎年伸び続けて、令和6年に2,170件でピークを打っています。

そして令和7年は1,833件で、初めて前年を下回りました

なんで減ったの?

そこは資料に書かれていません。

ですので、私も理由は断定しません

ただ、2025年1月に手続きの入口が変わったことと同じ年である、という事実は書いておきます。

因果は不明です。資料は減少の理由に触れていません。手続きの統合と同じ年に起きた、という事実だけを並べておきます。

いずれにせよ、7年で累計8,500件を超える程度の規模です。

制度としては定着した一方で、誰もが使う手続きではないことも数字から見えてきますね。

総務省が想定していた使われ方

同じ資料に、制度を作ったときに想定していた利用ケースが書かれています。

スマートフォンアプリの不具合対応約1週間
新製品開発の参考としての動作確認約1週間〜1ヶ月
スマートフォンの次期OSへの対応のための試験約3ヶ月

いちばん長いケースでも3ヶ月です。

180日という上限は、この想定に対して倍の余裕を持たせた数字だと読めます。

制度を作るときの意見募集でも、資料はこう記しています。

制度導入時の意見募集の結果

・180日では不足とする意見はなし
・既存免許人側からは既存無線局に影響を与えないようにすることの要望等

つまり180日という数字は、業界側から「短い」と言われて決まったものではないわけですね。

180日で足りないときの選択肢と、その費用

180日で足りないときの選択肢として特例制度0円・実験試験局6,200円・技適認証345,100円の費用と期間を比べた図解

この記事でいちばん実用的な章です。

先に書いたとおり、同じ規格・同じ目的での単純な再延長はできません。

181日目の壁をどう越えるか。ここが一番聞かれるところだよ。

では181日目以降も続けたいとき、どうするか。

選択肢は3つあり、費用と期間がまったく違います。

選択肢使える期間費用
特例制度
(180日ルール)
180日
同一規格・目的の再延長は不可
0円
実験試験局
の免許
5年
再免許申請も可能
電子申請 6,200円
書面 9,630円
技適・認証
を取得する
制限なし5台で345,100円
(2.4GHz帯無線LANの複数規格機の場合)

えっ、実験試験局って6,200円で5年なの?

そうなんです。

ここは知られていないと思います。

実験試験局の内訳

書面(円/局)電子(円/局)
申請手数料7,0803,750
検査手数料2,5502,450
合計9,6306,200

電子申請なら1局あたり6,200円で、5年間実験できます

しかも再免許の申請もできるので、そこで終わりというわけでもありません。

180日を1回使って終わるより、腰を据えて開発するならこちらのほうが素直な場合があります

1日あたり3.4円。6,200円を5年(1,825日)で割った金額です。180日で切れる無料の届出と、どちらが実験の役に立つかは考えてみる価値があります。

総務省の資料自体、こう書いています。

総務省資料より

電波の適正利用の観点からは、長期の実験の場合、実験試験局免許又は技適を取得することが原則である一方、科学や技術の発達のための実験等の重要性を踏まえ、無線規格や日数を限定して特例を設けたもの

長期なら実験試験局か技適が原則。

180日ルールはあくまで特例、という位置づけですね。

技適・認証を取る場合の期間と費用

製品として売るなら、最終的にはここに行き着きます。

技適7営業日以内
認証15営業日以内
費用2.4GHz帯無線LANの複数規格機の場合、5台で345,100円(認証機関によって異なる)

期間は意外と短く、費用はそれなりにかかる、という形です。

「試作段階は180日ルール、製品化のめどが立ったら認証」という順序が、費用面からも自然でしょう。

電波利用電子申請で届出を出す

電波利用電子申請で技適特例の届出を出す手順を入力・確認・届出完了の3ステップで示した図解

ここから手続きの話に入ります。

ここからは実際の画面の話。私が同じシステムを使ったときの実感も入れていくよ。

冒頭に書いたとおり、入口は電波利用電子申請です。

まずアカウントを発行する

トップページの「初めてご利用の方へ」からアカウント発行に進みます。

発行の手続きは、個人・法人・団体の3つに分かれています。

区分使えるログイン方法
個人マイナポータル連携/電子証明書/ログインID・パスワード
法人GビズID/電子証明書/ログインID・パスワード
団体(社団)電子証明書/ログインID・パスワード

法人の方は要注意です。GビズIDが使えるのはGビズIDプライムとGビズIDメンバーのみで、GビズIDエントリーは対象外と明記されています。

総務省 電波利用電子申請のログイン画面。マイナポータル連携・GビズID・電子証明書・ログインIDの4つの方法

ログイン画面では、この4つの方法が並びます。

個人ならマイナポータル連携がいちばん早そう

繰り返しになりますが、2024年中に取ったアカウントは使えません

取り直しになります。

ここで止まる人がいます。令和6年12月31日以前のアカウントは、IDとパスワードが合っていてもログインできません。新規発行からやり直してください。

私の場合はその日のうちに使えるようになった

ここからは、私自身が同じシステムを使ったときの話です。

ただし手続きの中身はデジタル簡易無線の包括登録で、この特例制度の届出そのものではありません。

そこは分けて読んでください。

実体験の範囲について。アカウント発行・ログイン・申請画面の操作は、特例制度の届出と同じ「電波利用電子申請」上の手続きです。届出の中身そのものは別物として読んでください。

私はパソコンにICカードリーダーをつなぎ、マイナンバーカードで本人確認をしました。

その結果、その日のうちにアカウントが使えるようになっています

公式には利用開始まで1週間程度かかる場合があると案内されているので、余裕をみておくと安心でしょう。

郵送でIDが届くのを待つんじゃないんだ

古い記事のとおりに郵便を待っても、届きません。

そこは変わっています。

申請の画面は「パソコン専用」と案内される

もう1点、実際に触って分かったことをお伝えします。

用意するもの。パソコン1台、ICカードリーダー、マイナンバーカード、そしてワンタイムパスワードのアプリ(Google Authenticator または Microsoft Authenticator)。ログイン時にワンタイムパスワードを求められます。

アプリが使えない場合は、メールでワンタイムパスワードを受け取るチェックボックスも用意されています。

そしてログイン後、申請の入口には注意書きが表示されます。

総務省 電波利用電子申請(申請種別選択の画面)

※ 以下の手続きは、パソコン専用です。スマートフォンやタブレットでは正常に表示・動作しない可能性があります。

アカウント発行と本人確認まではスマートフォンでもできます。

この注意書きはスマートフォンで開いても表示されますが、操作そのものが止められるわけではありません

「正常に表示・動作しない可能性があります」という書き方どおり、動くかどうかは環境しだいということですね。

それでもパソコンを勧めます。入力項目が多く、規格の選択は一覧から複数選ぶ形です。公式が推奨していない環境で、途中まで入れた内容を失うリスクを取る理由がありません。

不備を指摘されてもやり直しにはならない

ここは実際に出してみないと分からないところ。私は指摘を受けた側なので、そのまま書くね。

私はデジタル簡易無線の手続きで、実際に総務省から不備の指摘を受けました。

そのときも、最初から出し直しにはなっていません。

「補正後提出」の機能から、指摘を受けた申請書を直して再提出できます。

間違えたら最初からやり直しかと思ってた

この経緯は別の記事にまとめてあるので、電子申請そのものが不安な方はそちらもどうぞ。

「デジタル簡易無線の包括登録を電子申請でやる全手順|開設届で総務省に指摘された3か所」

届出の画面は、資料の6項目より細かい

電子申請で行う開設届出の入力画面
STEP
入力

目的・規格・機器の情報・設置場所などを入れます。途中で保存もできます。

STEP
確認

入力した内容を画面で確かめます。

STEP
届出完了

ここで180日のカウントが始まります。

総務省の資料では届け出る内容が6項目に整理されていましたが、実際の入力画面はもう少し細かく分かれています

届出者情報氏名・住所・メールアドレス(登録済みの内容を確認する形)
実験等の目的ひな形から選ぶ/ひな形を使わず入力(6,000字以内)
無線設備の規格該当する規格を一覧から選択(複数選択可)
機器を識別する番号等シリアルナンバー等(200字以内)
機器の製造者100字以内
機器の型式または名称200字以内。外国の認証表示の通称(番号があれば番号も)を併記
設置場所・移動範囲2,500字以内
屋内/屋外の別屋内のみ/屋外を含む
運用開始年月日実際に運用を開始する日
緊急連絡先電話番号
確認方法前章の①②から選択

資料の6項目に加えて、機器そのものを特定する情報が要ります。

シリアルナンバー、製造者、型式または名称の3つですね。

海外から取り寄せた機器では、ここが手元で分からないことがあります。

先に控えておくと楽です。本体の刻印・貼付ラベル・パッケージを、届出の前に撮っておきましょう。型式の欄には外国の認証表示の通称(FCC IDなど)も併記します。

複数台を届け出るときは、「識別番号以外をコピーして無線局を追加」が使えます。

同じ機種を何台も入れるなら、これで手間がだいぶ減りますね。

途中で中断したいときは「入力内容を保存する」で一時保存もできます。

JSONファイルでも届け出られます。入力画面の上部に「JSONファイルを用いて編集」があり、ファイルを読み込ませて届出を作れます。大量に届け出る企業向けの機能でしょう。

そして手数料はかかりません。

🔴 「実験等の目的」は書き直しがきかない

入力画面で、いちばん重い注意書きが付いているのがこの項目です。

届出画面「実験等の目的」のご注意事項

本項目は、開設届出後の変更届出ができません。また、同じ目的・規格で届出を行えるのは一回限りです。重複する目的・規格では再届出できません。
新たに別の短期間の実験等の必要が生じた場合に備え、目的の重複を避けるため、目的を可能な限り明確化して記載してください。

制度の説明として「単純な再延長はできない」と書きましたが、その実装がここにあります。

後から直せず、同じ目的では二度と出せません。

じゃあ、広めに書いておいたほうが得なんじゃない?

逆です。

総務省は「目的を可能な限り明確化して記載してください」と書いています。

広く書くほど、次の実験がその範囲に飲み込まれて出せなくなるからです。

この記事でいちばん実用的なコツかもしれません。目的は「絞って具体的に」。次に別の実験をしたくなったとき、重複せずにもう一度届け出られます。

入力欄には、選べるひな形も用意されていました。

  • 【機器名】を用いた【具体的なサービス等】の実験
  • 【機器名】を用いた【具体的な機能・アプリ等】の動作実験
  • 【具体的なイベント・媒体名】で行う【機器名】の需要調査

【 】の中を埋めれば、自然と具体的になる作りですね。

なお設置場所のほうは変更届出ができます

変えられるもの・変えられないもの。実験等の目的は開設届出後の変更届出ができません。設置場所は事前の変更届出で追加・変更できます。

一部が未定なら最初に設置する場所を書き、追加・変更のたびに事前に変更届出を出す形です。

🔴 180日は「運用開始日」ではなく「届出日」から始まる

もうひとつ、画面を見て初めて分かったことがあります。

届出画面「運用開始年月日」

実際に運用を開始する年月日を記入してください。
特例期間(180日間)は、届出日から開始となる事にご留意ください。

ここは読み飛ばすと損をします。

運用開始日を先の日付にしても、180日のカウントは届出を出した日から進みます

つまり早く出しすぎると、実際に使える日数がその分だけ削られます。

1か月前に出したら、使えるのは150日です。「準備ができたから先に届出だけ済ませておこう」が、そのまま期間の目減りになります。機器が手元に届いて、実験を始められる状態になってから出すのが素直でしょう。

屋内/屋外の別も、この画面で必須項目として聞かれます。

前の章で見たW52・W53の屋内限定が、ここで効いてくるわけですね。

入力欄はここまで。でも、届出を出したら終わりではないんだ。

🔴 届出は「出して終わり」ではない

この制度でいちばん誤解されやすいのが、届出の位置づけです。

公式ガイドには、こう書かれています。

総務省 電波利用電子申請「開設届出について」

本制度は届出制度です。届出の受理に当たり形式上の審査(未記入箇所がないかなど)を行いますが、申請制度とは異なり事前審査や許可・承認等はありません。ご自身の責任で特例制度の対象範囲内で使用いただく限り、届出が到達したときから直ちに特例の効力が生じます。

事前審査も、許可も、承認もありません。

届出が到達した時点で、直ちに効力が生じます

裏を返せば、要件を満たしているかどうかの判断は、すべて届出者の側にあります。

受け付けられても、効力が生じないことがあります。公式ガイドは「届出が受け付けられた場合であっても、実際の無線機器や運用条件が特例制度の要件を満たしていない場合は、特例制度の効力が生じません」と明記しています。届出は免罪符ではありません。

実験中の管理も、届出者の責任です。

公式ガイドは、とるべき措置の例として表示すべき文言まで示していました。

表示または添付する内容

この無線設備は、電波法に定める技術基準への適合が確認されておらず、法に定める特別な条件の下でのみ使用が認められています。この条件に違反して無線設備を使用することは、法に定める罰則その他の措置の対象となります。

この文言を、機器に表示するか実験のレポートに添付しておく。

そして実験の参加者が会場から退出する際には、無線設備を回収する

技適マークの無い機器が、そのまま世の中に散らばらないようにする趣旨ですね。

機器は先にそろえてください。同じ実験等の目的では、無線機器を途中で増やすことができません。必要な台数を、届出の前にあらかじめ準備しておく必要があります。

使っている途中で壊れたらどうなるの?

故障などの場合は交換ができます

その場合は、識別番号等の変更届出を行う形になります。

実験が終わったら廃止届を出す

届出そのものは無料です。費用が発生するのは、実験試験局や技適・認証に進んだときだけ。始めるのも終わらせるのも0円です。

ここを忘れる人がいます。

実験等が終わったら、廃止の届出が必要です。

180日の期限が来る前に終わったなら、その時点で出します。

総務省「技適未取得機器に関する届出の手続き」より

変更届出・廃止届出の手続きは、過去申請履歴照会画面で該当する届出を選択し、詳細画面から行ってください。

廃止届は、開設届出とは別の入口から出します。

ログイン後の「過去申請履歴照会」で該当の届出を開き、その詳細画面から進む形ですね。

変更届出も同じ場所です。

出し忘れやすいのはこっち。始めるときより気が緩むからね。

届出を出して電波を出せる状態にしたということは、その無線設備を国が把握している状態だということです。

終わったら終わったと伝える。

それだけの話ですが、制度を使う側の責任にあたります。

放っておいたら勝手に切れるんじゃないの?

期間は切れますが、届出は届出です。

次に別の実験で使いたくなったときのためにも、きちんと閉じておくほうがよいでしょう。

諸外国はどうしているか

「海外では届出なんて要らないのに、日本は厳しすぎる」という声を見かけます。

本当にそうでしょうか。総務省が2026年3月の資料で6か国の制度を並べています。読むと、日本が突出して厳しいわけではないことが分かります。

これについて、総務省が2026年3月の資料で各国の状況を整理していました。

認証未取得での電波発射
米国条件付きで可。「認証未取得」のラベル貼付と、試験終了後の機器回収が必要
カナダ可。ただし開発ライセンス(実験試験局免許に相当)が必要な場合がある
英国技術要件を満たせば可
ドイツ・フランス不可。電波発射には実験試験局免許等が必要
豪州条件付きで可
ニュージーランド不可。実験試験局免許等が必要

ドイツ・フランス・ニュージーランドは、そもそも認証なしでは電波を出せません。

資料は次のようにまとめています。

総務省資料より

免許不要対象機器の電波発射において「認証(我が国における技適)」が必要なことは各国共通。
認証未取得でも電波発射可能とする場合も、利用者側において技術要件を満たすこと、干渉を引き起こさないことを条件とすることは共通。

日本の180日ルールは、国際的に見るとむしろ緩やかな部類だと分かります。

制度は今、見直しの検討段階にある

最後に、いちばん新しい話をお伝えします。

この記事で使ってきた総務省の資料は、2026年3月19日に規制改革推進会議のワーキング・グループへ提出されたものです。

ってことは、今も議論が続いてるってこと?

つまり、この制度は今まさに議論の対象になっています。

資料には、総務省の現状認識としてこう書かれています。

総務省資料「今後の対応について」より

制度導入から一定の期間を経過したところ、今般の提案も踏まえ、本制度の運用や、制度のそのものの見直しについて検討の必要があると認識

なお、180日そのものの見直しについては法改正を要するため、制度の利便性向上の観点からは、運用面での対応についても取組を進めたい

ここは押さえておきたいところです。

180日という数字を変えるには法改正が必要で、すぐには動きません。

一方で運用面での改善は、法改正を待たずに進む可能性があるということでもあります。

2つに分けて読みます。日数の変更は法改正マター。運用面の改善は、それを待たずに動きうる。総務省自身がそう書き分けています。

また、総務省は今後の対応としてこう記しています。

  • 180日ルールを利用する企業に対し、本ルールに関する評価、180日を超えるケースの具体例、混信の可能性等について実態を把握するため、調査を行う
  • 諸外国における制度の状況についても、参考とすべく深掘りを行う

調査の結果しだいで、運用が変わることは十分ありえます。

この記事も、動きがあれば更新します。

技適マークの表示のほうも、いま変わろうとしている

実はこの資料、後半のほうが面白いんだ。表示のルールも動いているよ。

同じ資料の後半は、技適マークの表示方法の話でした。

こちらも動いています。

表示のルールは機器の小型化に合わせて緩んできた

資料に改正の履歴が載っていたので、年表にしておきます。

時期改正の内容
平成22年
(2010年)
電子ラベル導入。携帯電話等の小型化・多機能化でマークを貼る場所が足りなくなり、機器本体のディスプレイに表示できるようにした
平成26年
(2014年)
無線設備の組込製品への表示を可能に。あわせてサイズ規制を5mmから3mm
平成31年
(2019年)
「直径3mm以上」を「容易に識別できる大きさ」に改正。本体にディスプレイが無くても外部ディスプレイに表示可能に
令和7年7月〜ソフトウェアアップデートで無線機能が変わる場合の表示に対応するため制度整備中

いちばん下が最新です。

ソフトウェアの更新で無線の機能が変わる製品が増え、そのたびに物理的なマークを貼り替える負担が問題になっています。

情報通信審議会の電波有効利用委員会で審議中とされています。

緩和の方向は一貫しています。5mm → 3mm →「容易に識別できる大きさ」。機器が小さくなるたびに、表示のルールは現実に合わせて緩められてきました。

🔴 表示が読めないと、使う側が電波法違反になりうる

ここは利用者にとって他人事ではありません。

令和7年11月25日の作業班で、それぞれの立場から意見が出ています。

立場出された意見
メーカーグローバル展開する製品は他国のマークも表示する必要があり、技適マークのスペース確保が困難。しかも包装も容器も存在しない製品があり、代替表示を許されても対応できない
利用者技適マークが確認できないと一般消費者を含む利用者が電波法違反となる可能性下取りを断られるといった不利益/医療関係者からは、認証番号が読めず周波数等を確認できないため施設の電波管理ができない
総務省市場監視で技適マークが確認できない事案があり、行政コストが増える

買った人が違反になっちゃうの?

可能性がある、と利用者側から指摘が出ているということです。

電波を出す責任は使う人にあります。

マークが読めなければ、適法かどうかを自分で確かめようがありません。

不利益は違反だけではありません。技適マークが確認できないと下取りを断られる例が挙がっています。医療機関からは、施設の電波管理ができないという指摘も出ています。

資料はこう結んでいます。

総務省資料より

技適マークの表示方法について、利用者等と製品メーカーの意見が両立する新たな規律が求められている。
関係者の意見等を踏まえ、今後、機器本体へ直接表示しなくてもよい要件及びその場合の表示方法について検討し、結果が得られ次第、速やかに制度改正を実施。

「結果が得られ次第、速やかに制度改正」と書かれています。

技適マークの表示ルールは、近いうちにまた変わるとみておいたほうがよさそうです。

日本・米国・欧州で何が違うか

海外の機器を扱うなら、この違いも知っておくと迷いません。

日本(技適マーク)米国(FCC ID)欧州(CEマーキング)
目的国内の電波干渉防止・電波の能率的利用同左安全・電波・環境の確保
効力免許手続の簡略化が可能販売・輸入の前提、免許不要の前提販売・輸入の前提
手続認証取得 または自己確認(届出)認証取得自己適合宣言
表示場所本体/本体ディスプレイ/外部ディスプレイ同左本体および包装の両方

日本の技適マークの法的な効力は「免許手続の簡略化」で、販売の可否そのものではありません。

ここが米国・欧州と根本的に違うところです。

だから海外では普通に売られている機器が、日本では「持っていてもいいが電波を出すと違反」という状態になります。

ここが日本の特徴です。米国のFCC IDと欧州のCEマーキングは「販売・輸入の前提」。日本の技適マークは「免許手続の簡略化」です。だから技適の無い機器も、日本で売ること自体はできてしまいます。

この記事で扱ってきた特例制度は、まさにその隙間を埋めるための仕組みだったわけですね。

特例制度に関するよくある質問

個人でも届出できますか?

できます。総務省の資料に「法人・個人のいずれも届出可能、手数料なし」と明記されています。

180日を過ぎたらどうなりますか?

その機器で電波を出すことはできなくなります。同じ規格・同じ目的での単純な再延長はできません。続けたい場合は、実験試験局の免許(電子申請で6,200円・5年)か、技適・認証の取得を検討することになります。

前に作ったアカウントは使えますか?

令和6年12月31日以前に取得したアカウントは使えません。新たにアカウントを発行する必要があります。総務省の電波利用電子申請に明記されています。

スマートフォンだけで手続きできますか?

アカウント発行と本人確認まではできます。ただし申請の画面には「パソコン専用です」と明記されているため、入力はパソコンで進めてください。

複数台をまとめて届け出できますか?

できます。「同規格の機器であれば、一つの届出で複数台の機器の届出が可能」と資料に書かれています。

技適が無い機器なら何でも対象ですか?

いいえ。対象の規格が決まっており、2.4GHz帯の無線LANとBluetooth、特定小電力無線局、60GHz帯小電力データ通信システム、デジタルコードレス電話などが該当します。加えて、日本の技術基準に相当する外国の基準(CEマーク、FCC認証など)に適合していることが前提になります。

まとめ|180日は「特例」であって、標準の手段ではない

この制度について、総務省の一次資料をもとに整理してきました。

この記事のまとめ
  • 2025年1月に「電波利用電子申請」へ統合。令和6年12月31日以前のアカウントは使えない
  • 使えるのは届出から180日。手数料は0円で、法人・個人どちらも可
  • 同じ規格・目的での単純な再延長はできない
  • 届出件数は令和6年の2,170件がピークで、令和7年は1,833件と初めて減少
  • 180日で足りないなら実験試験局が電子申請6,200円で5年。技適は5台345,100円
  • ドイツ・フランス・NZはそもそも認証なしでは電波を出せない
  • 制度は見直しの検討段階。ただし180日の変更には法改正が必要

調べていていちばん印象に残ったのは、総務省自身が「長期の実験なら実験試験局免許か技適が原則」と書いていることでした。

180日ルールは、あくまでその原則に対する特例です。

手軽で無料なので入口としては優秀ですが、これだけで開発を回そうとすると、必ず181日目の壁に当たります。

180日で何を確かめるか。それだけ決めておけば、この制度は素直に使えるよ。

最初から「180日で何を確かめるか」を決めて使うのが、この制度との正しい付き合い方でしょう。

この記事で参照した一次情報

※内容は2026年8月に確認したものです。

制度は見直しの検討段階にあるため、手続きの際は必ず公式でご確認ください。

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