短波ラジオを買おうとして、検索結果に並ぶのが通販サイトのランキングばかりで手が止まっていませんか。
しかも出てくるのは、聞いたことのない海外メーカーの製品ばかり。

ソニーとかパナソニックの短波ラジオって、もう無いの?
ありません。
最後の日本製BCLラジオは、すでに生産を終えています。
ソニーの公式ページを開くと、はっきり「生産完了」と書かれています。
だから「国産の安心できるやつ」という選択肢は、もう存在しません。この前提を知らないまま探すと、いつまでも決められないままになります。
この記事では、第一級陸上無線技術士で、かつて月刊「ラジオの製作」に記事を書いていた私が、いま何を買うべきかを整理します。
通販サイトのランキングを並べ替えただけの記事とは、立っている場所が違います。
国産機が消えていく過程を、当事者として見てきました。
電波法の条文まで確認したうえで書いていますので、法律面の不安もここで解消できます。


記事を書いた人
【きのぴぃ】
- CB免許廃止前にサイタマAD720/AE215のコールサインを取得。〇〇年にわたり細々と無線活動中。
- 電気工事士・第一級陸上無線技術士などの資格を持ち、電気・無線が得意です。
- 電波新聞社 月刊「ラジオの製作」元ライター フリーライセンス無線を主軸にガジェット記事を執筆
- 電波新聞社 アマチュア無線受験マニュアル企画記事担当
- マガジンランド 月刊「Let’s HAMing」元ライター
【結論】いま短波ラジオを買うなら、どれを選ぶか
先に答えを出します。
用途によって、選ぶべきものは3つに分かれます。
それぞれ見ていきましょう。
1万円台で「全部入り」を1台なら
本命はTECSUN PL-520です。
短波ラジオ選びで効いてくる装備が、この価格帯で一通りそろっています。



その装備って、具体的には何?
具体的にはSSB・同期検波・外部アンテナ端子の3点です。
この3つは、数千円クラスの製品には基本的に入りません。そして、あとから外付けで足すこともできません。最初に選ぶ段階でしか手に入らない差です。
それぞれが何の役に立つのかは、選び方のセクションで順に説明します。
実売はおよそ1万2千円前後で、日本語の取扱説明書も付属します。
中国メーカーの製品を初めて買う人でも、届いた日から操作できる構成でしょう。



1万円ちょっとで、そこまで入ってるんだ。
\ SSB・同期検波・外部アンテナ端子がそろった1台 /
価格と在庫は変動します。本記事の確認時点では1万1,800円でした。購入前に最新の情報をご確認ください。
とにかく安く短波の音を聞いてみたいなら
数千円クラスの製品でも、短波の音そのものは出ます。
国内メーカーのものなら、家電量販店でも手に入るでしょう。
ただし選局と混信で挫折しやすいという弱点があります。



音は出るのに、目当ての放送にたどり着けないってこと?
そのとおりです。
周波数が数字で表示されない機種だと、いま何メガヘルツを聞いているのかが分かりません。
短波の楽しみ方は「この周波数を狙って合わせる」という形が中心になります。
安い機種が悪いわけではありません。ただ「短波が面白いかどうかを判断する道具」としては不利になります。聞こえないのが機械のせいなのか、電波が届いていないだけなのかを切り分けられないためです。
ソニーの音が忘れられないなら(中古という選択肢)
ソニーのICF-SW7600GRは、いまも中古市場で見かけます。
新品はもう流通していません。
公式ページに「生産完了」と明記されているためです。
ICF-SW7600GR / 生産完了
中古を狙う場合、確認したいのは電池ぶたとロッドアンテナの状態です。
どちらも消耗しやすく、しかも部品の入手が難しくなっています。
電池ぶたを紛失している個体や、ロッドアンテナの根元が傷んだ個体が目立ちます。写真で状態を確かめてから判断してください。
この記事の結論が、他のサイトと違う理由
検索上位に並ぶページの多くは、通販サイトの売れ筋一覧です。
解説記事の形をしていても、実際に受信した記述がないものが少なくありません。
売れている順ではなく、電波を受ける道具として何が要るかで選びます。無線の国家資格を持つ立場から、法律面の根拠も条文で示します。そのうえで、実機を触った感触も載せます。
最後の日本製BCLラジオは、もう新品では買えない
短波ラジオ選びが難しくなった原因は、はっきりしています。
順番に見ていきます。
ソニーの公式ページは「生産完了」と書いている
ICF-SW7600GRは、ソニーの短波ラジオの最終形にあたる製品でした。
受信範囲は長波150kHzから短波29999kHzまで、そしてFMをカバーします。
この受信範囲は、これから紹介するPL-520とほぼ同じです。設計の考え方が受け継がれているとも言えます。
SSBの受信にも対応していました。
| 項目 | ICF-SW7600GRの仕様 |
| 長波 | 150kHz〜529kHz |
|---|---|
| 中波 | 530kHz〜1620kHz |
| 短波 | 1621kHz〜29999kHz |
| FM | 76MHz〜108MHz |
| 現在の状況 | 生産完了 |
この表の最後の行が、いまの状況をすべて表しています。
国産機が消えると、何が起きたか
国内メーカーが短波の本格機から手を引いた結果、選択肢の中身が入れ替わりました。
いま国内メーカー名で売られている短波対応機の多くは、数千円クラスの簡易な製品です。



国内メーカーの短波ラジオも売ってるけど、あれじゃダメなの?
周波数を数字で表示して、狙った局に合わせられる機種は、ほぼ海外製に限られます。
つまり「国産か海外製か」という軸では、もう選べません。選べるのは「簡易な受信機か、周波数を追える受信機か」という軸のほうです。ここを取り違えると、いつまでも決まりません。
だから選択肢は中国製になった
短波の受信機を作り続けているメーカーは、世界的にも多くありません。
その中で、いま日本で手に入りやすいのがTECSUNという中国メーカーです。
日本語の放送を追いかけている国内のBCL専門サイトでも、受信に使った機材としてTECSUNの機種名が挙がっています。



マニアの人たちも、普通に使ってるんだ?
使っています。
受信報告を出し続けているような人ほど、道具は現実的に選びます。
ブランドではなく、聞こえるかどうかで決めているわけです。
ブランドの安心感より、実際に聞こえるかどうかを優先できる人に向いています。道具として割り切れるかどうかが分かれ目になります。
「ラジオの製作」を書いていた頃と、今
私は電波新聞社の月刊「ラジオの製作」で記事を書いていました。
当時は、国内メーカーが競って高性能な受信機を出していた時代です。
あの頃を知っていると、いまの棚の寂しさは正直こたえます。
受信機の中身は、当時のアナログ回路からDSPという半導体処理に置き換わりました。その結果、昔なら数万円した機能が1万円台に降りてきています。同期検波もSSBも、かつては上級機だけの装備でした。道具としては、むしろ恵まれた時代です。
そもそも短波ラジオで何が聞けるのか
買う前に、何が聞こえるのかを把握しておきましょう。
この4つの型を押さえれば十分です。
| 聞こえるもの | 中身 | 受信のしやすさ |
| 国内の短波放送 | 株式市場の情報・競馬中継 | 安定して受かりやすい |
|---|---|---|
| 海外の日本語放送 | 近隣国の国際放送・宗教番組 | 時間帯と季節で変わる |
| 外国語の国際放送 | ニュース・音楽 | 数は多いが条件次第 |
| 放送以外の信号 | アマチュア無線・標準電波・気象 | SSB対応だと世界が広がる |
国内の短波放送
国内に向けて短波で放送している民間局が、ラジオNIKKEIです。
株式市場の情報や競馬中継を流しています。
国内から出ている電波なので、海外の放送より条件に左右されにくくなります。なお日本からは、茨城県の送信所を使ったNHKの国際放送も短波で出ています。ただしこちらは海外に向けた放送で、国内では届かない範囲が生じるため受かりにくい場合があります。
短波ラジオを買って最初に狙うなら、ここがいちばん確実でしょう。
動作確認の基準として使えます。国内から出ている電波なので、機械が正常なら何かしら受かります。ここが入らないなら、アンテナか設置場所を疑う順番になります。
海外から届く日本語放送
アジアの近隣国を中心に、日本語で放送している国際放送があります。
宗教団体が運営する日本語番組も存在します。
ただし局の顔ぶれは年々入れ替わります。



この記事に局の一覧は載せないの?
あえて載せません。
ここ十年ほどで、日本語放送をやめた局がいくつも出ているためです。
古い一覧をそのまま信じると、聞こえないのを機械のせいだと思い込むことになります。
最新の状況は、受信の記録を公開している専門サイトが詳しいです。局の一覧はそちらでご確認ください。
外国語の国際放送
言葉が分からなくても、短波の面白さはここに集まっています。
知らない言語の音楽やニュースが、遠くから途切れ途切れに届きます。
時間帯によって聞こえる国が入れ替わるのも、短波ならではでしょう。
短波は上空の電離層で反射して戻ってきます。だから山や建物を越えて、地球の裏側まで届くことがあります。反射の具合は太陽の活動と時間帯で変わるため、同じ周波数でも聞こえたり聞こえなかったりします。
放送ではない信号
短波帯には、放送以外の電波もたくさん飛んでいます。
アマチュア無線の交信、時刻を知らせる標準電波、気象情報などです。
数字を延々と読み上げるだけの、正体のはっきりしない信号も存在します。
この正体不明の信号については、短波ラジオで聞こえる怖い放送の正体で詳しく扱っています。


具体的に今どの局が聞けるかは、別記事にまとめている
4つの型はこの先も変わりません。
一方で、個々の局の状況は動きます。
そちらは別の記事で扱っていますので、あわせてご覧ください。
失敗しない選び方は、5つだけ見れば足りる


短波ラジオのスペック表は項目が多く、どこを見ればいいのか分かりにくいものです。
実際に効いてくるのは5つだけと考えて問題ありません。
1つずつ説明します。
①受信できる周波数の範囲
短波はおおむね1.6MHzから30MHzまでの範囲を指します。
この全域が連続して受信できるかどうかが、最初の分かれ目です。



短波対応って書いてあれば、全部入ってるんじゃないの?
安価な機種には、いくつかの帯だけを切り出したものがあります。
切り出し型だと、目当ての放送が範囲外になることがあります。「短波対応」と書いてあっても全域とは限りません。仕様欄で受信範囲の数字を必ず確認してください。
PL-520の短波は1711kHzから29999kHzまでをカバーします。
実質的に全域と考えて差し支えないでしょう。
②SSB — アマチュア無線や航空・船舶を聞くなら必須
SSBは単側波帯という電波の出し方です。
片方の側波帯だけを送ることで、電力と占有する帯域を節約できる方式です。
放送ではなく、無線の交信で広く使われています。
普通のラジオでSSBの電波を受けると、アヒルが鳴くような音にしか聞こえません。



それって故障じゃなくて、そういうものなの?
そういうものです。
SSB対応の受信機なら、これが人の声として復元されます。
アマチュア無線の交信を聞きたいなら、避けて通れない機能です。
SSB対応機の中でも、通す帯域の幅を切り替えられるかどうかで使い勝手が変わります。PL-520は0.5・1.2・2.2・3.0・4.0kHzの5段階から選べます。回路の段数ではなく、選べる幅が5通りあるという意味です。混んでいるときは狭く、静かなときは広くという使い分けができます。
③同期検波 — 混信と音の揺れに効く
短波の音は、波打つように大きくなったり小さくなったりします。
電離層の反射経路が複数あるために起きる現象です。
同期検波は、この揺れによる歪みを抑えるための仕組みになります。
隣の強い局からの混信にも効きます。電波の片側だけを選んで復調できるためです。ソニーのICF-SW7600GRが評価されていた理由の1つが、この同期検波でした。
PL-520は、その同期検波を1万円台で載せています。
かつて上級機の証だった装備が降りてきた形です。
ただし海外のレビューでは、同期検波を入れると音がこもりぎみになるとの指摘もあります。
同期検波は期待どおりに動作するが、同期検波モードでの音質はかなりフィルタが掛かった印象になる。
常時オンにするのではなく、荒れているときだけ使う機能と考えるとよいでしょう。
機種を選ぶ段階では、同期検波が付いているかどうかだけ見ておけば十分です。効き方の細かい差は、使いながら分かってきます。
④外部アンテナ端子 — 聞こえるかどうかを一番左右する
5つの中で、実際の結果をいちばん動かすのがここです。
受信機の性能より、アンテナのほうが効きます。
本体に付いているロッドアンテナだけでは、屋内で厳しい場面が出てきます。



高い受信機を買えば解決するんじゃないの?
そうはなりません。
電波を捕まえる入り口が小さければ、その先をいくら良くしても限界があります。
だから端子の有無を、価格より先に確認してください。
PL-520の端子まわりには「FM & SW ANTENNA」と刻印されています。実際に確かめたところ、表示のとおり外部アンテナが効くのは短波とFMだけで、中波と長波では効きませんでした。下位機のPL-330も取扱説明書を見ると同じなので、この2機種を比べるときの決め手にはなりません。遠くのAM局を外部アンテナで狙いたい人は、ここを先に知っておいてください。
⑤電源方式 — 乾電池か、内蔵リチウムか
見落とされがちですが、用途によっては決定的な項目です。
PL-520はBL-5Cというリチウムイオン電池を使い、USB Type-Cで充電します。
ふだん使いには便利な方式でしょう。
| 電源方式 | 向いている場面 | 弱点 |
| 乾電池 | 非常用の備え | ランニングコストがかかる |
|---|---|---|
| 内蔵リチウム+USB充電 | ふだん使い・持ち歩き | 停電が長引くと充電手段に困る |
| 両対応 | どちらもこなせる | 本体が大きくなりがち |
非常用として引き出しに入れておくなら、乾電池式のほうが素直です。
この点は防災のセクションでもう一度触れます。
価格帯ごとに、何ができて何ができないか
予算から入る場合は、こちらの整理が役に立ちます。
境目がはっきりしているので、迷いどころは少ないはずです。
| 価格帯 | 周波数表示 | SSB・同期検波 | 向いている人 |
| 3千円前後 | 数字が出ない機種が多い | 基本的になし | 短波を試してみたい人 |
|---|---|---|---|
| 1万円前後 | 数字表示・直接入力できる | 両方あり | 短波を主役にしたい人 |
| 3万円以上 | 数字表示・多機能 | 機種による | 設置場所を用意できる人 |
3千円前後 — 短波の音は出るが、狙って合わせにくい
この価格帯は、AM・FMに短波を足した簡易な構成が中心です。
選局はダイヤルを回す方式が多く、周波数の数字が出ません。
周波数の数字が出ないと、聞こえた放送がどこの局だったのか調べようがありません。
SSBと同期検波は基本的に付きません。
「短波って何が聞こえるんだろう」を試すには十分です。ただし本格的に追いかけ始めると、半年ほどで物足りなくなります。買い替え前提なら合理的、長く使うつもりなら遠回りになります。
1万円前後 — SSBと同期検波が入る現実的な本命
DSP方式の受信機が主戦場にしている価格帯です。
周波数が数字で表示され、直接入力もできます。
SSB・同期検波・外部アンテナ端子が一通りそろうのも、だいたいここからです。
3千円との差は約8千円ですが、できることの差はそれ以上に開きます。とくに周波数直接入力の有無は、日々の使い勝手を大きく変えます。目的の周波数が分かっているとき、テンキーで打ち込めるかどうかは決定的です。
3万円以上 — 据置機と広帯域受信機の世界
ここから上は、短波専用機ではなくなってきます。
アマチュア無線用の据置機や、広い周波数を扱う受信機が入ってきます。
短波「も」聞ける機械という位置づけになるでしょう。
持ち歩いて窓際で聞くという使い方には向きません。設置場所とアンテナを用意できる人向けの選択肢です。
おすすめ機種の比較(早見表)
ここまでの5項目を、機種ごとに並べます。
価格は変動しますので、目安としてご覧ください。
| 機種 | SSB | 同期検波 | 外部アンテナ端子 | 電源 | 入手経路 |
| TECSUN PL-520 | ◯(フィルタ5段階) | ◯ | ◯(短波・FMのみ) | BL-5C/USB-C | 並行輸入が中心 |
|---|---|---|---|---|---|
| TECSUN PL-330 | ◯ | ◯ | ◯(短波・FMのみ) | BL-5C | 並行輸入が中心 |
| 数千円クラス | × | × | 機種による | 乾電池 | 国内流通 |
| SONY ICF-SW7600GR | ◯ | ◯ | ◯ | 乾電池 | 中古のみ |
TECSUNの2機種は、どちらも短波とFMだけです。PL-520は実機の刻印と受信で、PL-330は取扱説明書で確認しました。中波と長波では外部アンテナは効きません。ICF-SW7600GRについては、こちらで確認できていません。
表を見ると、条件を満たしていて新品で買えるのはTECSUNの2機種だけだと分かります。
TECSUN PL-520 — 1万円台で全部入り
PL-520は、同社のPL-330とPL-320の改良を1台にまとめた位置づけの製品です。
中波と長波に5kHz、短波に6kHzの帯域幅が追加されました。
通す幅を選べると、混んでいる場面で隣の局を切り離しやすくなります。
充電端子はUSB Type-Cに変わり、背面のスタンドとよく使う局を呼び出すボタンも付いています。
- 短波は1711kHz〜29999kHzを14バンドでカバー
- SSBの帯域幅は0.5/1.2/2.2/3.0/4.0kHzの5段階から選べる
- 本体サイズは139×85×26mm、重量は約210g
- 付属品はBL-5C電池・USB充電ケーブル・イヤホン・携帯ケース・日本語取扱説明書
手のひらに載る大きさで、外へ持ち出しても負担になりません。
\ 日本語取扱説明書つき /
TECSUN PL-330 — 価格差をどう見るか
PL-330は、PL-520が出るまで同社の中心にあった機種です。



それって、要するに型落ちってこと?
SSBも同期検波も持っており、基本性能で不足はありません。
気になったので、2機種の取扱説明書を並べて読み比べました。
中身はほとんど同じです。受信できる範囲も、SSBも同期検波も、書かれていることがそっくりでした。
はっきり違ったのは、次の3点だけでした。
| PL-330 | PL-520 | |
| 充電端子 | Micro USB | USB Type-C |
| お気に入りボタン | なし | あり |
| 背面スタンド | なし | あり |
PL-330側は取扱説明書で、PL-520側は手元の実機で確かめました。海外のレビューでも同じ3点が挙げられており、内容は一致しています。



受信の性能そのものは変わらないってこと?
取扱説明書を読んだ範囲では、そう読めます。
つまり差は使い勝手の外側にあって、受信そのものではありません。
価格差が小さいならPL-520が有利です。逆にPL-330が大きく安く出ているなら、そちらで十分だと思います。Micro USBのケーブルを1本用意して、立てたいときは何かに立てかける。譲るのはその程度です。
数千円クラス — 割り切って使うなら
国内メーカー名で流通している安価な短波対応機です。
家電量販店で現物を見て買えるという利点があります。
短波を「おまけ」と割り切れるなら、悪い選択ではありません。



結局どっちがいいか、はっきり言ってくれる?
目的で決まります。
短波を主役にするなら1万円台、AM・FMが主役で短波は保険という位置づけなら数千円クラスです。
SONY ICF-SW7600GR — 中古で買う人向け
性能面では、いまでも十分に通用します。



今でも十分使えるなら、中古でいいんじゃないの?
ただし製造から時間が経っており、個体差が大きくなっています。
修理を引き受けてもらえる保証はありません。
初めての1台には勧めにくい選択肢です。不調が出たときに、機械のせいなのか電波のせいなのかを判断できる経験が要ります。2台目として、あるいは思い入れがある人向けと考えてください。
TECSUN PL-520を実際に使ってみた
ここからは、実機を触った記録です。
順に見ていきます。
箱から出したところ(付属品と第一印象)
開けてまず思ったのは、必要なものがひととおり入っているということでした。


- 本体
- BL-5C型のリチウムイオン電池
- USB充電ケーブル
- イヤホン
- 保護ケース(ポーチ)
- マニュアル類(日本語版を含む)


買い足す必要があるとすれば、外部アンテナくらいでしょう。
日本語のマニュアルが入っているのは、海外メーカー製としては安心できる点です。



別に買い足すものが無いのはうれしいね。
大きさと手に持った感じ


本体は139×85×26mm、重さは約210gです。
数字だけ見ても、なかなかぴんと来ないと思います。
実際に手に取ると、さほど大きくも重くも感じませんでした。


持ち歩く用途で、重さが気になることはないでしょう。短波は場所を変えると聞こえ方が変わるので、気軽に移動できる大きさであることは実用上の利点になります。
感度は受信機だけで決まりません。設置した場所とアンテナの条件もあわせて記録します。
感度 — 内蔵アンテナだけでどこまで聞こえたか
いちばん気になるところだと思います。
結論から書くと、内蔵アンテナだけでも十分に楽しめました。




- 中波1566kHzのHLAZ(韓国・FEBC)
- 短波帯の中国国際放送(中国)
- 朝鮮の声(北朝鮮)
- KBSワールドラジオ(韓国)
- 台湾国際放送(台湾)
- 近隣のFM局
いずれも外部アンテナは接続していません。



内蔵アンテナだけで、そこまで入るんだ。
聞く分には不自由しませんでした。
ただし本格的に追いかけるなら、やはり外部アンテナが要ります。
受信状態を安定させたい人は、外部アンテナのセクションもあわせてご覧ください。
いちばん効いたのは、実は同期検波ではありませんでした。バンド幅、つまり通す帯域の広さを選べることのほうが、はっきり結果に出ました。
ポータブル機でありながら、選択度を切り替えられます。
混信しているときに幅を狭めると、目的の放送が浮かび上がってきました。
正直なところ、同期検波よりもこちらのほうが効果を実感できました。
バンド幅の切り替えは、仕様表では目立たない項目です。しかし実際に使ってみると、いちばん出番の多い機能でした。機種を選ぶときは、ここを見ておく価値があります。
45年前の名機と、感度を比べてみた
途中で、1977年発売のナショナル「プロシード2800」(RF-2800)が手元に来ました。
BCLブームの頃の、いわゆる高級機です。
せっかくなので、同じ部屋で並べて比べてみました。


| 機種 | 発売 | ロッドアンテナの長さ |
| ナショナル RF-2800 | 1977年 | 96cm |
| TECSUN PL-520 | 現行 | 49cm |
アンテナの長さが倍近く違います。
普通に考えれば、長いほうが有利です。
ところがFM・短波・中波の3バンドとも、感度に大きな差はありませんでした。どちらかといえばPL-520のほうが良さそうに感じたほどです。



45年前の高級機のほうが、良いはずだと思っていました。
私の予想は外れました。
・同じ周波数・同じ時刻で交互に切り替えました
・どちらも内蔵アンテナのみ(外部アンテナは接続していません)
・フェージングがあるので1回では判断せず、3往復して毎回どちらが上かを見ました
・私の手元の個体での話です。45年前の製品なので、個体差や経年の影響は避けられません
条件をそろえないと、その日のコンディションの差を機種の差として書いてしまいます。
ここで分かったのは「新しいほうが優れている」ではなく、ロッドアンテナの長さは、思ったほど効いていないということでした。では何が効くのか。答えは後半の外部アンテナのセクションにあります。
ただしこの結論には続きがあります。
放送のような強い電波では差が出ませんでしたが、もっと弱い電波では、はっきり差が出ました。
その話は、次のSSBのところで書きます。
SSBは「合わせにくいが、聞こえる」


夜になってアマチュア無線局が入るようになったので、ようやく試せました。
結果は、良いところと悪いところがはっきり分かれました。
まずUSBとLSBの切り替えは確実に動きました。同じ局で両方を試して、正しく切り替わることを確認しています。
くるくる回る表示は、自動で合わせているわけではなかった
SSBに切り替えると、画面に何かがくるくる回る表示が出ます。



自動で合わせてくれるのかな?
私もそう思っていました。
そこでわざと数百Hzずらした状態で試してみました。
周波数はまったく動きませんでした。合わせに寄っていく気配もありません。手で正確に合わせる方式です。
取扱説明書にこの表示の説明はありません。
取扱説明書に書かれていない挙動なので、私と同じ勘違いをする方がいると思います。
45年前のつまみのほうが、合わせやすかった
ここで、さきほどのRF-2800と比べてみます。
RF-2800にはBFOピッチというつまみが付いています。
これを回すと、声が自然に聞こえる位置を耳で探しながら合わせられます。
同じ局で両方やってみて、ゼロインのしやすさはRF-2800のほうが上でした。つまみを微妙に回すという操作は、45年経っても合理的だということです。
ところが、そのRF-2800では聞こえない局があった
操作性で負けたので、これはPL-520の弱点だと思いました。
ところが、続きがあります。
RF-2800のほうがノイズが多く、PL-520で弱く聞こえていたアマチュア局が、ノイズに埋もれて聞こえませんでした。
放送のような強い電波では、3バンドとも差が出なかった2台です。
それが弱い電波になると、はっきり分かれました。
| ゼロインの操作 | 弱いSSB信号 | |
| RF-2800 | ◯ BFOピッチで合わせやすい | ✕ ノイズに埋もれて聞こえない |
| PL-520 | ✕ 手で合わせる。手間はかかる | ◯ 弱くても聞こえる |
聞こえない信号は、合わせようがありません。操作性ではRF-2800が上でしたが、実際に使うならPL-520を選ぶ理由がここにあります。
「新しいほうが便利」でも「昔の機械のほうが良い」でもありませんでした。
得意なところが、それぞれ違っただけです。
受信した交信の中身については触れません。電波法で、傍受した通信の内容を漏らすことは禁じられています。ここで書けるのは「復調できたかどうか」という受信機の性能の話までです。
同期検波は効くのか
この機種の同期検波は、良いほうの側帯波を自動で選んでくれます。
手動で上下を切り替える手間はありません。使っていくうちに、この機能が効く場面が2つあると分かってきました。
①混信の「ピー音」が軽くなる
隣の局が近いと、音声にピーという音が重なることがあります。
これが同期検波をオンにすると軽くなりました。
ここがバンド幅では届かないところです。バンド幅を絞ると混信そのものは減るのですが、ピー音の軽減までは至りませんでした。
②フェージング中の「しゃっくり」が起きなくなる
電波が波打つように強くなったり弱くなったりすると、音がしゃっくりのように途切れることがあります。
この現象はフェージングの周期に合わせて起きました。
同期検波に切り替えると、これが起きなくなりました。
ちなみに45年前のRF-2800では、この現象は一度も起きませんでした。
理由は分かりませんし、そう書いてある資料も見つけられませんでしたので、起きたことだけを書いておきます。
バンド幅と同期検波は、互いの代わりにならない
2つの機能は、効く症状が違いました。
| 困っていること | 使う機能 |
| 隣の局がかぶる | まずバンド幅を絞る |
| ピー音が耳につく | バンド幅では消えない。同期検波 |
| 音がしゃっくりのように途切れる | 同期検波 |
仕様表は「バンド幅◯段/同期検波あり」と並べて書いてあるだけで、どちらがどの症状に効くかまでは書かれていません。両方いじってみて、初めて使い分けが分かりました。
混信そのものを切る力は、やはりバンド幅のほうが上でした。
ただし同期検波にしかできないことがある、というのが実際に使ってみた結論です。
操作系は毎日触れる部分です。仕様表には出にくいところなので、実際の感触を残します。
操作系 — 思ったより難しくなかった
操作は、身構えていたほど難しくありませんでした。
BCLラジオを使い慣れた人なら、分からないところだけ説明書を見れば使いこなせます。


初めて短波に触れる人でも、自動選局から入れば迷わないはずです。
- 64〜108MHz
- 76〜108MHz
- 87〜108MHz
- 88〜108MHz
日本で使うなら、76〜108MHzを選んでおけば足ります。
AM放送をFMで流す放送まで、この設定でカバーできます。
海外向けに作られた製品なので、日本の放送に合わせる設定が最初に一度だけ必要になります。ここは説明書を開いたほうが早いところです。


ここは不満だった点
気になった点は3つありました。
- 乾電池が使えない
- フェージングが激しいと、音量が上下しやすい
- 電池が切れると時計がリセットされる
まず電源です。
乾電池が使えません。
電源は付属のBL-5C型リチウムイオン電池と、USB充電に限られます。
非常用として引き出しに入れておく使い方には向きません。停電が長引くと、充電する手段のほうに困ります。この点は防災のセクションで書いたとおりです。
2つめは、短波帯でフェージングが激しいときの挙動です。
先に説明した、電波の強さが波打つように上下する現象のことを指します。
そうした電波を受けると、音声が大きくなったり小さくなったりしやすいと感じました。
とくに音がしゃっくりのように途切れることがあり、これはフェージングの周期に合わせて起きました。この部分は据置型の受信機との差が出やすいところかもしれません。
気になったので、45年前のRF-2800でも同じ電波を聞いてみました。
あちらでは、しゃっくりは一度も起きませんでした。理由は分かりません。そう書いてある資料も見つけられなかったので、起きたことだけを書いておきます。
正直なところ、ここは古い機械のほうが素直でした。
ただしこの機種には逃げ道があります。同期検波に切り替えると、しゃっくりは起きなくなりました。
音量が波打つこと自体は残りますが、途切れは消えます。
実際に起きる欠点なので、不満点としてはそのまま残しておきます。ただ対処法のある欠点だということも、あわせて知っておいてください。
3つめは細かい点です。



細かいって、どんなこと?
電池が切れると、時計がリセットされます。
充電を切らさないようにするか、使うたびに合わせ直すことになります。
時刻に連動する機能を使う人は、電池残量に気を配ることになるでしょう。
短波は時間帯で聞こえる放送が入れ替わります。時計が狂ったままだと、狙った時刻に合わせるつもりが1本ずれる、ということが起こり得ます。
裏を返せば、不満はこの3点にとどまりました。
これだけの装備がそろっていて、この価格です。
なお海外のレビューでは、音質の調整機能がない点も短所として挙げられています。
音楽向けと音声向けを切り替えるような設定がないため、放送の種類によっては物足りなく感じる場面があるとされています。
送信機能は搭載していない(実機で確認)
最後に、法律面に関わる点を1つ確認しておきました。
PL-520にBluetoothやWi-Fiは搭載されていません。
つまり電波を出す機能を持たない、純粋な受信機です。
この確認が、次のセクションの結論にそのままつながります。受信しかしない機器は、そもそも電波法の「無線局」に当たりません。詳しくは技適のセクションで条文を引いて説明します。
中国製の受信機に技適は必要なのか


海外メーカーの無線機器と聞いて、法律面を心配する人は多いはずです。
結論から書くと、受信するだけの機械に技適も免許も要りません。
根拠は電波法の条文そのものにあります。
条文を引きながら確認しましょう。
電波法は「受信のみを目的とするもの」を無線局から除いている
技適や免許が問題になるのは、その機器が「無線局」に当たる場合です。
その無線局の定義が、電波法の第2条に置かれています。
「無線局」とは、無線設備及び無線設備の操作を行う者の総体をいう。但し、受信のみを目的とするものを含まない。
但し書きが、この問題の答えそのものです。
受信専用のラジオは無線局に当たらず、免許も技適も前提になりません。



じゃあ海外メーカー製でも関係ないってこと?
海外メーカー製かどうかは、この判断に関係しないわけです。
「技適マークが付いていない海外製品は違法」という話は、電波を出す機器についての話です。トランシーバーやWi-Fi機器はこれに当たります。一方、受ける専用の機械は最初から対象の外にあります。同じ「無線機器」でも、扱いがまったく違います。
ただし受信設備にも条件はある(第29条)
まったく野放しというわけでもありません。
受信設備についても、電波法に条文が用意されています。
受信設備は、その副次的に発する電波又は高周波電流が、総務省令で定める限度をこえて他の無線設備の機能に支障を与えるものであつてはならない。
受信機の内部でも、わずかな電波は発生します。
それが他の無線設備の邪魔をしてはいけない、という規定です。
受信機の中では局部発振器という回路が動いています。ここから漏れるわずかな信号が対象です。
ふつうに市販されている製品を、ふつうに使う限りで問題になる場面はまずありません。
限度は総務省令で定められており、市販品は設計の段階でこれを織り込んでいます。電波の制度全体については総務省 電波利用ホームページにまとまっています。
送信機能が付いていると話が変わる
注意が要るのは、受信機の顔をした複合機です。
BluetoothやWi-Fiを積んだ製品は、その部分が電波を出します。
その場合は技適の対象になります。
買う前に、送信機能の有無を仕様欄で確認してください。近年はBluetoothスピーカーを兼ねたラジオも増えています。受信専用機と同じ感覚で選ぶと、判断を間違えます。なおPL-520はBluetoothもWi-Fiも搭載しておらず、実機で送信機能がないことを確認しました(実機レビューの該当箇所)。したがって、この機種については技適の心配をする必要がありません。
技適が要る機器を海外から持ち込む場合は
送信する機器を試したい場合には、期限つきの届出制度が用意されています。
ただし本記事で扱っている受信機には関係ありません。
制度の中身を知りたい方は、技適未取得機器を用いた実験等の特例制度にまとめてあります。期間に限りがあるため、常用を前提にした仕組みではありません。


どこで買うのが安全か
ここは正直に書いておきたい部分です。
買ってから知るより、先に知っておくほうが良い話です。
PL-520には国内の正規流通がない
日本国内でTECSUNを扱っている販売店はあります。
ただし取扱ラインナップの中心はオーディオ機器で、短波受信機のPL-520は含まれていません。
取扱一覧に並ぶのはオーディオ機器が中心で、PL-520が属する「PLシリーズ」は1機種も掲載されていません。
つまり通販で見かけるPL-520は、並行輸入品にあたります。
これは製品の良し悪しとは別の話です。受信機として優れていても、国内メーカー品と同じサポートは期待できません。ここを納得したうえで買うかどうかが分かれ目になります。
出品者を必ず確認する
通販サイトの商品ページでは、販売元の表示を確認してください。
サイト自身が売っているのか、出店している業者が売っているのかで対応が変わります。
日本語の取扱説明書が付くかどうかも、出品者によって差が出ます。
- 販売元の表示(サイト直販か、出店業者か)
- 日本語取扱説明書が付属するかどうか
- 初期不良時の連絡先が明記されているか
保証をどう考えるか
並行輸入品では、メーカー保証を国内で受けられないのが一般的です。
実際の窓口は、販売した出品者になります。
到着したらすぐ電源を入れて、ひととおり動作を確かめてください。



不安なら国内メーカーの安いのを買うべき?
それも1つの判断です。
ただし国内メーカー品にSSBと同期検波は載っていません。
安心を取るか、性能を取るかという選択になります。
サポートを最優先するなら国内メーカー品、受信性能を最優先するなら並行輸入品という整理になります。どちらを取るかは使い方によって変わります。
買った日に音を出すまで
届いたその日に「何も聞こえない」で終わる人が、実は少なくありません。
手順を踏めば、たいてい何かは受かります。
短波は夜のほうが遠くまで届きます。昼間に部屋の奥で試すと、条件がいちばん悪い状態になります。
途中までしか伸ばしていないと、性能が出ません。まっすぐ上ではなく、少し斜めに傾けたほうが良い場合もあります。
最初から手動で周波数を探すと、ほぼ確実に迷子になります。受信できた局を自動で拾って並べてくれる機能から始めてください。
国内から出ている電波なので、機械が正常なら受かる可能性が高くなります。ここが入れば、少なくとも故障ではないと判断できます。
この4ステップで、たいていは最初の1局にたどり着きます。
「買ったのに何も聞こえない」ときの切り分け
それでも駄目なとき、原因は3つに絞り込めます。
上から順に試してください。


時間帯を変える
同じ周波数でも、昼と夜では聞こえ方がまったく違います。
昼に何も入らなかった帯が、夜には賑やかになることも珍しくありません。
季節や太陽の活動によっても変わります。数日から数週間の幅で試すのが現実的です。
1日試して結論を出さないでください。
低い周波数は夜、高い周波数は昼というのが大まかな傾向です。7・9MHz付近が夜に賑わい、15MHz以上は日中に伸びます。この感覚をつかむと、探す時間が一気に短くなります。
場所とノイズ源を疑う
現代の住宅は、短波にとって騒がしい環境です。
照明器具や充電器、パソコンの電源などがノイズを出します。
受信機をそれらから離すだけで、聞こえ方が変わることがあります。



ザーッという音がずっと鳴ってるのはそれ?
その可能性が高いです。
試しに家じゅうのスイッチを1つずつ切って、音の変化を確かめてみてください。
ノイズ源が分かったら、受信するときだけその機器の電源を切るという運用でも改善します。
それでも駄目ならアンテナ
時間帯と場所を試しても変わらないなら、次はアンテナです。
ここが最後にして最大の要素になります。
詳しくは次のセクションで扱います。
より細かい切り分けは、短波ラジオで何が聞けるのかでも扱っています。あわせてご覧ください。


外部アンテナで結果は変わる
受信機を買い替えるより、アンテナを足すほうが効きます。
費用対効果はかなり良い部類です。


内蔵ロッドの限界
ロッドアンテナの長さは、せいぜい数十センチです。
短波の波長は10メートルから100メートル以上あります。



波長って、そんなに長いの?
桁が違う短さで受けているわけです。
それでも受かるのは、短波の電波が強いからです。逆に言えば、少し長い電線を足すだけで結果が跳ね上がる余地が残っています。ここが短波受信の面白いところでもあります。
純正アンテナを買って、10局で測ってみた
ここは推測で書きたくなかったので、TECSUNの純正アンテナ「AN-03L」を買って確かめました。


リールに電線が巻かれていて、引き出して使うタイプです。設置は2階の窓から下へ垂らしただけで、工事はしていません。
昼の国内局で、まず試した
最初に試したのはラジオNIKKEI第1(6055kHz)です。
国内の短波局なので、読者の方も同じ条件で試せます。
昼の12時半ごろ、電界強度の表示が46dBμから66dBμへ上がりました。
夜、海外局10局で測り直した
1局だけでは、たまたまかもしれません。
そこで夜、聞こえた海外局を片っ端から測りました。
どこの国から届いているのかも、あわせて書いておきます。
| 局(どこの国か) | 周波数・時刻 | 内蔵 | AN-03L | 差 |
| 中国国際放送(中国) | 11710kHz 17:10 | 54 | 66 | +12 |
| 朝鮮の声(北朝鮮) | 9650kHz 17:20 | 51 | 72 | +21 |
| KNLS(アメリカ・アラスカ) | 9695kHz 17:22 | 56 | 75 | +19 |
| KNLS(アメリカ・アラスカ) | 11875kHz 18:09 | 54 | 69 | +15 |
| Hope Radio(パラオ) | 9965kHz 18:50 | 60 | 70 | +10 |
| 中国国際放送(中国) | 15260kHz 19:06 | 60 | 96 | +36 |
| 台湾国際放送(台湾) | 9595kHz 19:18 | 55 | 74 | +19 |
| KNLS(アメリカ・アラスカ) | 9580kHz 19:20 | 53 | 78 | +25 |
| NHK Radio Japan(日本) | 11855kHz 19:22 | 54 | 70 | +16 |
| ラジオNIKKEI(日本) | 6055kHz 19:25 | 73 | 82 | +9 |
単位はdBμ、いずれもPL-520の画面に出る数字です。
並べてみて、あらためて驚きました。アラスカとパラオの放送が、自宅の窓から垂らした電線で聞こえているわけです。
フェージングがあるので、1局につき3回から7回、内蔵と外部を往復して見比べています。
10局すべてでプラスでした。下がった局も、変わらなかった局もありません。平均で+18dB、いちばん小さくて+9dB、大きいところで+36dBです。
ただし+36dBは1局だけの数字です。真ん中あたりを取ると、+17dBから+18dBというのが実感に近いと思います。
数字より、こちらのほうが大きい
正直に言うと、dBの数字はあまり実感につながりません。
効いたと思ったのは、こちらです。
・KNLS 9695kHz
・KNLS 11875kHz
・NHK Radio Japan 11855kHz
(Hope Radio 9965kHzは、内蔵ではかすかに聞こえる程度でした)
この3局は、内蔵アンテナでは何も聞こえませんでした。
AN-03Lにつなぐと、はっきり声が出ました。



何dB上がったかより、聞こえるか聞こえないかですね。
そのとおりだと思います。
電界強度の数字は、聞こえるかどうかを決めていなかった
表をもう一度見てください。
内蔵アンテナのときの数字は、聞こえた局も聞こえなかった局も似たような値です。
| 内蔵の表示 | 局 | 聞こえたか |
| 56dBμ | KNLS 9695kHz | 聞こえない |
| 54dBμ | 中国国際放送 11710kHz | 聞こえる |
| 54dBμ | NHK Radio Japan 11855kHz | 聞こえない |
| 51dBμ | 朝鮮の声 9650kHz | 聞こえる |
56dBμで聞こえない局があり、51dBμで聞こえる局がありました。つまり電界強度の数字だけを追っても、聞こえるかどうかは分かりません。
ではどこを見ればよいのか。
PL-520の画面には、dBμのすぐ隣にもう1つ数字が出ています。S/Nと書かれた、信号とノイズの比です。
同じ局で、内蔵と外部の画面を撮り比べた
ラジオNIKKEI(6055kHz)を、夜8時ごろに撮ったものです。




| アンテナ | 電界強度 | S/N |
| 内蔵ロッド | 65dBμ | 7dB |
| AN-03L | 90dBμ | 25dB |
信号だけでなく、S/Nも7dBから25dBへ上がっています。
外部アンテナというと「信号もノイズも一緒に大きくなるだけではないか」と思う方がいるはずです。
私もそう思っていました。
少なくともこのときは、ノイズとの差そのものが広がっていました。
ラジオNIKKEI 6055kHzを3回測りました。
・昼12時半 46 → 66dBμ
・夜7時半 73 → 82dBμ
・夜8時ごろ 65 → 90dBμ
短波はこういうものです。1回の測定で機材を評価してはいけない、というのがよく分かりました。
なお、これらは私の家の、この設置での結果です。同じアンテナでも、張る場所と高さで結果は変わります。
ベランダに数メートル張るだけで違う
特別な部品は要りません。
ビニール被覆の電線を数メートル、窓の外へ伸ばすだけで効果が出ます。
外部アンテナ端子があれば、そこへつなぎます。


イヤホンと同じ形の穴なので、電線をそのまま挿すことはできません。プラグを自分で付けるか、純正のAN-03Lのようにプラグ付きの製品を使うことになります。挿してしまえば、あとは窓の外へ伸ばすだけです。
電線の端をロッドアンテナに数回巻き付けるだけでも、ある程度は効きます。ただし端子経由に比べると不安定です。長く楽しむつもりなら、やはり端子つきの機種を選んでおくほうが後が楽になります。
張るときの注意
屋外に電線を伸ばす以上、安全面の配慮は必要です。
- 電力線には絶対に近づけない
- 落下や飛散がないように固定する
- 荒天が近づいたら屋内側の接続を外す
- 集合住宅では管理規約を確認する
とくに落雷への備えは軽く見ないでください。
FMを良くしたいなら、家に残っているアンテナが使えます
先に書いたとおり、PL-520の端子は短波とFMに効きます。つまりFM放送の入りを良くする用途にも使えます。
ここで思い出してほしいのが、屋根に残っている古いテレビアンテナです。
地デジに切り替えたあと、外さずにそのままにしてあるお宅は少なくありません。
実際に自宅でやってみた手順を、別記事にまとめてあります。
→ FMラジオの電波の入りを良くするテクニックを紹介!30年物のVHF TVアンテナが生き返る法


短波用に電線を張る前に、すでに家にあるものを試してみるのも手です。
短波ラジオは防災に役立つのか
防災目的で短波ラジオを探している方には、先に正直な整理をお伝えします。
売りたい側の都合ではなく、道具としての実態を書きます。
国内の情報収集はAM・FMのほうが実用的
身の回りで何が起きているかを知るには、地元の放送局が最も早いです。
それはAMとFMで流れます。
自治体からの呼びかけも、地元の放送局を通じて伝わります。
短波は国境を越えるのが得意な代わりに、近所の情報には向きません。
「防災用に短波が要る」という説明を見かけたら、いったん立ち止まってください。非常用として最優先で備えるべきは、AM・FMが安定して受かるラジオと乾電池です。短波はその次に来ます。
それでも短波が効く場面
短波の強みは、通信網に依存しないところにあります。
インターネットも携帯回線も使えない場所へ、電波だけで届きます。
海外での情報収集や、山間部での長期滞在では意味を持つでしょう。



じゃあ日本国内で普通に暮らす分には要らない?
備えとしての優先順位は高くありません。
短波ラジオは、防災用品ではなく趣味の道具として選ぶほうが納得感があります。
海外に長期滞在する予定があるなら、意味のある備えになります。
非常用に置くなら電源方式で選ぶ
それでも非常用を兼ねたいなら、見るべきは受信性能ではありません。
電源方式です。
内蔵リチウム電池だけの機種は、停電が長引くと充電手段に困ります。
非常用には乾電池式のAM・FMラジオを別に用意し、短波機は趣味用と割り切るのが素直です。1台にすべてを求めると、どちらの用途でも中途半端になります。予備の乾電池を切らさないほうが、よほど確実な備えになります。
短波ラジオのおすすめに関するよくある質問
検索でよく見かける疑問をまとめました。
短波が聞けるラジオはどれですか?
おおむね1.6MHzから30MHzまでを受信できる機種です。製品名や仕様欄に「SW」または「ワールドバンド」と書かれているものが該当します。範囲が飛び飛びの機種もあるため、数字での確認をおすすめします。
日本で聞ける短波放送は何がありますか?
国内の短波放送、海外からの日本語放送、外国語の国際放送、そして放送以外の信号の4種類に分かれます。個々の局は入れ替わりが激しいため、この記事では一覧を作っていません。詳しくは短波ラジオで何が聞けるのかをご覧ください。
短波ラジオはどうやって聞くのですか?
日が暮れてから窓際へ移動し、ロッドアンテナを最後まで伸ばします。そのうえで自動選局機能を使うと、受かる局を機械が拾ってくれます。手動で周波数を探すのは、慣れてからで十分です。
中国製の短波ラジオに技適は必要ですか?
受信するだけの機器であれば必要ありません。電波法第2条第5号が「無線局」の定義から「受信のみを目的とするもの」を除いているためです。ただしBluetoothなど電波を出す機能が付いている場合は、その部分が技適の対象になります。
ソニーの短波ラジオはもう買えないのですか?
新品では買えません。ICF-SW7600GRはソニーの公式ページで生産完了と案内されています。入手するなら中古市場を探すことになります。
短波ラジオは防災に役立ちますか?
国内の情報収集という点では、AM・FMのほうが実用的です。短波は通信網に依存せず遠方から届く点に強みがあります。非常用の備えとしては、乾電池で動くAM・FMラジオを優先することをおすすめします。
外部アンテナは必要ですか?
屋内で受信するなら、あったほうが結果は大きく変わります。ビニール被覆の電線を数メートル窓の外へ伸ばすだけでも効果があります。将来を考えるなら、外部アンテナ端子のある機種を選んでおくと安心です。
PL-520とPL-330はどちらを買うべきですか?
取扱説明書を読み比べたところ、受信に関わる部分はほとんど同じでした。はっきり違うのは充電端子(Micro USB/USB Type-C)・お気に入りボタン・背面スタンドの3点です。価格差が小さいならPL-520、PL-330が大きく安いならそちらで十分です。
まとめ|国産が消えても、短波は聞ける
短波ラジオ選びが難しく感じるのは、前提が変わったことが知られていないからです。
国産の本格機はもう新品では手に入りません。
そのかわり、かつて上級機だけが持っていた装備が1万円台に降りてきています。
最初の1台に迷っているなら、SSBと同期検波と外部アンテナ端子がそろったPL-520から始めるのが堅実です。
\ 国産が消えたあとの現実的な1台 /
受信できるようになったら、次は放送局へ受信報告を送ってみてください。
受信を証明するカードが返ってくることがあります。詳しくはベリカードはまだもらえるのかで扱っています。短波の楽しみは、聞くだけで終わりません。








