
「短波ラジオに興味はあるけれど、不気味な声が聞こえるらしくて怖い」
そう感じて検索された方が多いのではないでしょうか。



ブザーがずっと鳴ってる放送があるって聞いて、ちょっと引いちゃった…
結論を先にお伝えします。
短波ラジオが怖いと言われる正体は、4種類の放送と、電波そのものの性質に分けられます。
正体がわかってしまえば、怖さの大半は消えるはずです。



正体があるんだ。てっきり原因不明の話かと思ってた
この記事では、第一級陸上無線技術士の私が、それぞれの放送が何なのかを整理したうえで、なぜ不気味に聞こえるのかを電波の性質から解説します。



じつは「不気味に聞こえる」ほうには、ちゃんと技術的な理由があるんだ
怖いどころか、命綱になる放送があることも最後にお伝えします。


記事を書いた人
【きのぴぃ】
- CB免許廃止前にサイタマAD720/AE215のコールサインを取得。〇〇年にわたり細々と無線活動中。
- 電気工事士・第一級陸上無線技術士などの資格を持ち、電気・無線が得意です。
- 電波新聞社 月刊「ラジオの製作」元ライター フリーライセンス無線を主軸にガジェット記事を執筆
- 電波新聞社 アマチュア無線受験マニュアル企画記事担当
- マガジンランド 月刊「Let’s HAMing」元ライター
短波ラジオが怖いと言われる正体は4種類
ネット上で「怖い」と語られている短波放送は、ほぼ次の4つに集約されます。


| 種類 | どんな音か | 正体 |
| ブザー放送 | 単調なブザー音が延々と鳴り続ける | UVB-76。目的は公表されていない |
| 乱数放送 | 数字やアルファベットを淡々と読み上げる | 情報活動に関わるとされる送信 |
| 妨害電波 | 耳障りな雑音が放送に覆いかぶさる | 特定の放送を聞かせないための送信 |
| 政治宣伝・宗教放送 | 叫ぶような演説や独特の節回し | 国外向けの宣伝放送 |
そしてもう1つ、放送の中身とは別に電波の性質そのものが怖さを増幅しています。



音が波打ったり急に沈んだりするやつ?
そのとおりで、フェージングや混信といった現象が、普通の放送すら不気味に響かせます。
順番に見ていきましょう。
ブザーが鳴り続ける放送「UVB-76」


短波の怖い話でもっとも有名なのが、通称「ザ・ブザー」と呼ばれる放送です。
ひとつずつ確認します。
4625kHzで今も鳴り続けている
UVB-76は4625kHz、または6998kHzで送信されているとみられています。
送信元はロシア連邦内で、現在はモスクワ州ナロ=フォミンスクの通信基地から送信されているようです。
周波数がわかっているので、自分で確かめられます。短波が受信できる機械をお持ちなら、4625kHzに合わせるだけです。ブザーが鳴っていれば、それがうわさの正体になります。
正体不明の放送でありながら、周波数だけは誰でも知っている点が、この放送の不思議なところでしょう。
1分間に21回から34回という単調さ
気味悪さの正体は、音そのものより単調さにあります。
1分間に約21回から34回のペースで、短い単調なブザー音を繰り返し流し続けている
ブザー音は遅くとも1990年から確認されており、ソ連時代の1976年に始まったという説もあります。
数十年にわたって同じ音が鳴り続けている、という事実が不安をかき立てるわけです。
まれに音声が割り込む
ブザーが止まり、人の声が読み上げられることがあります。
2010年代に入ってからは頻度が増え、ほぼ毎月のように音声が確認されるようになりました。
1日に複数回の音声が発せられる日もあるとされています。



ずっと同じ音だったものが急に喋る、という落差が怖さを作っているんだね
目的は公表されていない
肝心の目的については、公には明らかにされていません。
周波数を確保し続けるための送信だという見方や、待機状態を伝える運用だという見方があります。
| 項目 | 内容 |
| 通称 | ザ・ブザー(The Buzzer) |
| 周波数 | 4625kHz または 6998kHz |
| 音の間隔 | 1分間に約21回から34回 |
| 確認時期 | 遅くとも1990年から。1976年開始との説もあり |
| 送信元 | ロシア連邦内とみられる |
| 音声の割り込み | 2010年代に入って急増。ほぼ毎月 |
| 目的 | 公表されていない |
いずれも推測の域を出ないため、当ブログでも断定はいたしません。
わからないものをわからないまま扱うのも、無線の楽しみ方のひとつです。
数字を読み上げ続ける「乱数放送」
抑揚のない声が数字を延々と読み上げる放送も、怖いと言われる代表格です。
順に見ていきます。
乱数放送とは何か
乱数放送は、数字やアルファベットの羅列を読み上げるだけの短波放送です。
英語ではナンバーズステーションと呼ばれ、国家レベルの情報活動に関わるものとされています。
短波が選ばれるのは、電離層で反射して国境を越え、受信機さえあれば誰でも受け取れるからです。
受信側が特定されないという特性があります。電波を出せば発信元は探られますが、受け取るだけなら痕跡が残りません。インターネットの時代になっても短波が使われ続ける理由がここにあります。
日本周辺で知られているもの
日本の近隣では、北朝鮮が各地に潜伏する要員へ向けて送信しているとされる放送が知られています。
通称「A3放送」は長い中断をはさんで再開したと伝えられました。
また海上自衛隊の送信とされる信号も、受信家の間では古くから知られた存在です。



思ったより身近なところから出てるのね
ただし周波数も時間帯も変わりますので、当ブログでは具体的なスケジュールは扱いません。
聞こえても解読はできない
不安に感じる必要がないのは、聞こえたところで内容がわからないからです。
乱数放送は、送信側と受信側だけが持つ変換表を使う方式が基本とされています。
表が手元になければ、数字の並びはただの数字であり、解読は原理的に不可能です。



暗号として強いのは、仕組みが単純だからなんだ
不気味さは残っても、聞いてしまった側に危険が及ぶ性質のものではありません。
放送に覆いかぶさる「妨害電波」
耳障りな雑音が突然かぶさってきて放送が潰れる、という現象もあります。
ここは怖い話ではなく、いま現在も続いている現実の話です。
妨害電波とは何をしているのか
妨害電波は、特定の放送を聞かせないために同じ周波数へ強い電波を送る行為です。
受信機は強いほうの信号に引きずられるため、目的の放送が雑音に埋もれてしまいます。
技術的には単純ですが、出力の勝負になるため受信側では防ぎようがありません。



音が急に汚くなるのは、機械の故障じゃなくて外から潰されている場合があるんだ
実際に妨害を受けている放送がある
日本から送信されている「しおかぜ」という短波放送があります。
特定失踪者問題調査会が運営し、救出を待つ拉致被害者へ情報を届けるための放送です。
2005年10月に始まり、送信はKDDI八俣送信所から行われています。
「怖い放送」ではありません。雑音まみれで聞こえるため不気味に感じられることがありますが、しおかぜは救出のための放送です。妨害を受けているという事実こそが、この放送の意味を物語っています。
妨害が初めて確認されたのは2007年3月で、以後は頻繁に受けているとされます。
二重放送という対抗策


妨害への対抗策として取られているのが二重放送です。
各時間帯に周波数を5波用意しておき、その中から同時に2波を送信する方式で、2019年4月から実施されています。
片方が潰されても、もう片方が届く可能性を残すという考え方です。
「しおかぜ」の妨害電波対策、二重放送が、8月1日より全面復帰出来る事になりました(略)4か月間、北朝鮮当局から集中的に妨害電波を発射されていた受信報告が続いていました
放送時間や周波数は変更されますので、聞いてみたい方は 調査会の公式ページ で最新の情報をご確認ください。
叫ぶような演説が流れる宣伝放送
4つ目は、国外へ向けた政治宣伝や宗教の放送です。
独特の抑揚で演説が続いたり、聞き慣れない節回しの音楽が流れたりします。
言語がわからないまま強い口調だけが伝わるため、内容以上に怖く感じられるのが特徴でしょう。



何を言ってるかわからないと、余計に怖く感じちゃうかも
短波は国境を越えて届くので、こうした放送に予算をかける国が今も存在します。
裏を返せば、日本にいながら世界の主張を直接受け取れるということでもあります。
なぜ不気味に聞こえるのか|電波の性質から解く
ここからが本題で、放送の中身が普通でも短波は不気味に響きます。
どれも異常ではなく、短波帯では正常に起きる現象です。


フェージングで声が波打ち、急に沈む
短波は上空の電離層で反射して遠くまで届きます。
このとき、経路の違う電波が受信点で重なり合い、互いに強め合ったり打ち消し合ったりするのです。
結果として音量が周期的に上下する現象がフェージングで、声が波打ったり突然沈んだりします。
怖さの正体の半分はこれです。人の声がゆっくり遠のいて、また戻ってくる。演出でやれば恐怖映像の手法ですが、短波では毎日ふつうに起きています。
夜になると遠くの局が入ってくる
昼と夜で聞こえる局がまるで変わるのも短波の特徴です。
日中は電離層の低い層が電波を吸収しますが、夜になるとその層が薄くなり、電波は遠くまで反射していくのです。
そのため夜のほうが遠方の局を拾いやすく、聞き覚えのない言語が急に現れます。



「夜中に変な放送が入った」という体験談が多いのは、これが理由だよ
混信で複数の声が重なる
短波帯は世界中の放送局が限られた幅を分け合って使っています。
電離層の状態しだいで、想定外の遠方局が同じ周波数に重なることも珍しくありません。
別の言語がふたつ重なって聞こえると、それだけで得体の知れない音になります。
短波帯は世界の共有地です。FM放送のように国内で周波数が整理されている世界とは前提が違います。同じ周波数に他国の局が乗ってくるのは、混雑した帯域では日常の風景です。
混信は故障でも心霊現象でもなく、周波数が有限であることの当然の帰結です。
SSBは同調がずれると声が化ける
いちばん誤解されやすいのがSSBという電波型式です。
SSBは効率のために搬送波を送らないので、受信側で基準となる信号を作り直して復調します。
このとき周波数がわずかにずれるだけで声の高さが変わり、人の声とは思えない音に化けます。
| 症状 | 原因 | 対処 |
| 声が低く潰れる | 同調周波数が低い側にずれている | ダイヤルをわずかに上げる |
| 声が甲高くなる | 同調周波数が高い側にずれている | ダイヤルをわずかに下げる |
| 何を言っているかわからない | USBとLSBの選択が逆 | 電波型式を切り替える |
不気味な声だと思っていたものが、ダイヤルを少し回すだけで普通の会話に戻ることがあります。
ノイズの中から浮かび上がる
短波帯は雑音が多い世界です。
遠くの空電による雑音や、家庭内の電気機器が出す雑音が常に背景に流れています。
その中から人の声が浮かんでは沈む状況が、聞き手の想像力を刺激します。
| 現象 | どう聞こえるか | 原因 |
| フェージング | 声が波打ち、急に沈む | 経路の違う電波が受信点で干渉する |
| 夜間の遠距離伝搬 | 夜だけ知らない言語が入る | 電波を吸収する層が夜は薄くなる |
| 混信 | 複数の声が重なる | 限られた帯域を世界中で分け合っている |
| SSBの同調ずれ | 人の声に聞こえない音になる | 搬送波を受信側で作り直すため |
| ノイズ | 雑音から声が浮かんでは消える | 空電と家庭内の電気機器 |
ここまでの5つが重なった結果が、いわゆる「短波は怖い」という印象の正体です。
短波放送を聞くこと自体は違法ではない
「聞いたら捕まるのでは」という不安をお持ちの方もいるはずです。
ここは誤解が多いところなので、条文に沿って整理します。


電波法は傍受そのものを禁じていない
短波放送を受信する行為は、それだけでは違法になりません。
関係するのは電波法59条で、秘密の保護について定めた条文です。
条文は特定の相手に向けた無線通信を「傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない」と定めています。



「漏らす」と「窃用」が禁止で、聞くことは書いてないんだ
禁じられているのは「窃用」
ポイントは、禁じられている行為が傍受ではないという点です。
問題になるのは内容を他人に漏らすことと、自分や第三者の利益のために使うことの2つになります。
「盗聴は違法」という説明は雑すぎます。聞くこと自体と、聞いた内容を漏らしたり利用したりすることは、法律上まったく別の扱いです。ここを混同した解説がとても多いので注意してください。
そもそも放送は不特定多数へ向けたものですから、受信して聞くことは前提になっています。
罰則も、漏らした場合と窃用した場合にしか用意されていません。
| 条文 | 対象となる行為 | 罰則 |
| 電波法109条1項 | 無線局の取扱中に係る無線通信の秘密を漏らし、又は窃用した | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 電波法109条2項 | 無線通信の業務に従事する者が、業務に関し知り得た秘密を漏らし、又は窃用した | 2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 電波法109条の2 | 暗号通信を傍受した者が、秘密を漏らす目的または窃用する目的で内容を復元した | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
いずれも罰せられるのは漏らす・窃用する・その目的で復元するという行為で、受信そのものではありません。



ちなみに現在は「懲役」ではなく「拘禁刑」だよ。刑法改正で一本化されたから、古い解説は表記が変わってないんだ
やってはいけないこと
安心して聞くために、線引きだけは押さえておきましょう。
- 特定の相手へ向けた通信の内容を、他人に漏らさない
- 聞き取った内容を自分や第三者の利益のために使わない
- 暗号通信を、漏らす目的や利用する目的で復元しようとしない(電波法109条の2)
- 受信機を改造して電波を出せる状態にしない
放送を聞いて楽しむ範囲であれば、心配は要りません。
手元の受信機で確かめる方法
正体がわかったところで、実際に確かめてみるのがいちばんの近道です。
私の手元にある2台を例に説明します。


HF機なら短波帯をひととおり受信できる
私が使っているアイコムのIC-729は、アマチュア無線用のHF機です。
受信は短波帯を広くカバーしており、4625kHzも問題なく受信範囲に入っています。
AMだけでなくSSBやCWにも対応するので、放送以外の信号も追いかけられるのが強みです。



短波を本気で聞くなら、やっぱりHF機がいちばん素直だね
すでに生産は終了していますが、中古で手に入れて使い続けている方も少なくありません。
広帯域受信機はAMまでという制約がある
もう1台のアイコムIC-R5は、0.150MHzから1309.995MHzまでをカバーする広帯域受信機です。
ただし受信できる電波型式はWFM・FM・AMの3つで、SSBには対応していません。
仕様は アイコムの製品ページ で確認できます。
| 聞きたいもの | 広帯域受信機(AMまで) | HF機(SSB対応) |
| ブザー放送 | 聞こえる | 聞こえる |
| 乱数放送 | AMのものは聞こえる | 聞こえる |
| 国際放送・宣伝放送 | 聞こえる | 聞こえる |
| アマチュア無線の交信 | SSBが多く聞き取れない | 聞こえる |
短波放送の多くはAMですので、広帯域受信機でも入口としては十分に楽しめます。
結果を決めるのはアンテナ
受信機の性能より効くのがアンテナです。
IC-R5には中波用のバーアンテナが内蔵されていますが、短波は外部アンテナを使う設計になっています。
内蔵アンテナと外部アンテナを選べるのは中波とFMの話で、短波には当てはまりません。
付属のホイップだけでは実力が出ません。短波は波長が数十メートルありますから、数センチのホイップでは受け取れる量が限られます。窓の外へ数メートルの電線を延ばすだけでも、聞こえ方がはっきり変わります。
「何も聞こえない」と感じたときは、受信機ではなくアンテナを疑ってください。
怖いどころか命綱になる放送もある
最後に、短波の本来の価値にも触れておきましょう。
外務省は海外へ渡航する方に向けて、短波放送が受信できるラジオの携行を勧めています。
電話もインターネットも通じなくなったときの代替手段
通信網が使えない場所でも、電波は国境を越えて届きます。
不気味な音として語られがちな短波は、最後まで残る連絡手段でもあるわけです。



怖いって思ってたけど、見方が変わったかも
免許も資格もいらずに始められる無線については ライセンスフリー無線(フリラ)とは にまとめています。


短波ラジオが怖いと言われることへのよくある質問
検索でよく見かける疑問にお答えします。
短波ラジオを聞くと危険な目に遭いますか?
受信するだけで危険が及ぶことはありません。電波を出さないかぎり、こちらの位置や存在が相手に伝わることもありません。安心して聞いていただけます。
ブザー放送はどの周波数で聞けますか?
UVB-76は4625kHz、または6998kHzで送信されているとみられています。短波が受信できる機械であれば、周波数を合わせるだけで確認できます。
聞こえた内容を録音してもいいですか?
放送を個人で楽しむ範囲なら問題ありません。ただし特定の相手へ向けた通信については、内容を他人に漏らしたり利用したりする行為が電波法59条で禁じられています。
乱数放送の内容は解読できますか?
できません。送信側と受信側だけが持つ変換表を使う方式が基本とされており、表がなければ数字の並びに意味を見いだせません。解読を試みる行為も避けてください。
夜だけ変な放送が入るのはなぜですか?
夜は電波を吸収する電離層の層が薄くなり、遠方の局が届きやすくなるためです。故障でも心霊現象でもなく、短波帯では毎晩起きている正常な現象になります。
安いラジオでも短波は聞けますか?
聞けますが、アンテナで差が出ます。付属のホイップだけでは実力が出ないため、窓の外へ数メートルの電線を延ばすだけでも聞こえ方が変わります。
短波ラジオの怖さは、正体がわかれば消える
不気味な音の正体は、突き詰めれば4種類の放送と電波の性質でした。
怖いと言われる放送のほとんどは、正体を知ってしまえば単なる技術現象と国際情勢の反映です。
むしろ怖がって遠ざけるには、短波は惜しい趣味だと私は思っています。
短波放送の周波数一覧の見方を下記記事で解説しています。


昭和の無線がどんな世界だったかは CB無線の昭和40年代にあったクラブ紹介 でも紹介していますので、あわせてご覧ください。









