
「同じデジタル簡易無線なのに、相手とまったく通信できないのよ…。どうして??」
同じチャンネルに合わせても声が入らず、故障かと悩む人は少なくありません。
私は無線関連の資格(第一級陸上無線技術士・アマチュア無線・第一級陸上特殊無線技士)を持ち、デジタル無線の音声方式も扱ってきました。
この記事では、その原因である音声方式(AMBEとRALCWI)の違いと選び方を、全メーカーの対応も含めて解説します。
買ってから後悔しないよう、原因と選び方を順に見ていきます。


記事を書いた人
【きのぴぃ】
- CB免許廃止前にサイタマAD720/AE215のコールサインを取得。〇〇年にわたり細々と無線活動中。
- 電気工事士・第一級陸上無線技術士などの資格を持ち、電気・無線が得意です。
- 電波新聞社 月刊「ラジオの製作」元ライター フリーライセンス無線を主軸にガジェット記事を執筆
- 電波新聞社 アマチュア無線受験マニュアル企画記事担当
- マガジンランド 月刊「Let’s HAMing」元ライター
結論:通信できない原因は「音声方式の違い」


まず結論からお伝えします。
デジタル簡易無線で相手と通信できない大きな原因は、音声方式(AMBEとRALCWI)が違うことです。
方式が異なると、同じチャンネルに合わせても声はもちろんノイズすら入りません。
覚えておくべき要点。他社(アイコム・ケンウッド・八重洲・モトローラ)はすべてAMBE方式。RALCWIはアルインコの一部だけの少数派です。不特定多数と交信したいなら、迷わずAMBEを選びます。
まずは、この2つの方式が何なのかを押さえましょう。



「同じデジ簡なら通じる」と思って買うと、方式違いで無音…って落とし穴があるんだよね。
AMBE方式とは?(世界標準・主流)


まずは主流のAMBE方式からです。
迷ったらこちら、という位置づけです。
DMR/P25にも使われる標準コーデック
AMBEは、音声をデジタルに変換するコーデック(音声符号化方式)のひとつです。
業務用デジタル無線のDMRや、米国の警察・消防が使うP25にも採用された、世界標準の方式になります。
それだけ実績のある方式なので、デジ簡でも安心して選べます。
日本のデジ簡でも圧倒的多数がAMBE
日本のデジタル簡易無線(登録局)でも、AMBE方式が圧倒的多数を占めます。
アイコム・ケンウッド・八重洲・モトローラといった主要メーカーは、いずれもAMBE方式です。
そのため、不特定多数のユーザーと交信したいならAMBEを選ぶのが定石です。
RALCWI方式(アルインコ方式)とは?


もう一方のRALCWI方式は、少し特殊な立ち位置です。
ここを理解しておくと、購入時の判断を誤りません。
英CML社の独自方式・アルインコの一部が採用
RALCWIは、イギリスのCML Microcircuits社が開発した低ビットレートの音声方式です。
日本のデジ簡でこれを採用しているのはアルインコだけで、いわゆる「アルインコ方式」と呼ばれます。
ただしアルインコもAMBE方式の機種を多く出しているため、機種ごとの確認が欠かせません。
少数派・仲間内や秘匿的な運用のニッチ
RALCWIは採用メーカーが1社のみで、ユーザー数も限られる少数派です。
裏を返すと、同じRALCWI機どうしでしか通じないため、仲間内で使えば周囲に会話が混ざりにくいという声もあります。
ただしこれは方式が違うだけで、法律上の秘話機能とは別物である点は理解しておきましょう。
なぜ方式が違うと通信できないのか


「同じ電波なのに、なぜ全く聞こえないのか」を仕組みから説明します。
デジタル無線は、声をいったん数字の並びに変換して送り、受信側が元の声に戻して聞いています。



このとき使う変換ルール(コーデック)がAMBEとRALCWIで根本的に違うため、受信しても元の声に戻せません。
その結果、声はもちろんノイズすら聞こえず、完全な無音になるのです。
アナログ無線のように「かすかに聞こえる」ことがないため、故障と勘違いしやすいのが厄介な点です。
全メーカー×方式の一覧表


メーカー別の採用方式を、一覧で整理します。
| メーカー | 採用方式 | 他社AMBE機と交信 |
| アイコム | AMBE | 可能 |
|---|---|---|
| ケンウッド | AMBE | 可能 |
| 八重洲(スタンダード) | AMBE | 可能 |
| モトローラ | AMBE | 可能 |
| アルインコ | AMBE / RALCWI(機種により異なる) | AMBE機は可能・RALCWI機は不可 |
| 項目 | AMBE | RALCWI |
| 主流度 | 圧倒的多数 | 少数派 |
|---|---|---|
| 採用メーカー | ほぼ全社 | アルインコの一部 |
| 互換 | AMBE機どうし可 | RALCWI機どうしのみ |
| 向いている用途 | 不特定多数・他社と交信 | 仲間内・限定運用 |
ポイントは、アルインコだけが2方式あるため、アルインコ機は方式表記の確認が必須という点です。
どっちを買うべき?用途別の選び方


用途に合わせて、方式を選び分けます。
迷ったときの基準も添えて説明します。
不特定多数・他社と交信するならAMBE(定番機)
フリラで不特定多数と交信したい、他社ユーザーとも通じたいなら、AMBE方式一択です。
アイコムのIC-DPR7や、アルインコのAMBE機であるDJ-DPS70などが定番になります。
主流方式を選んでおけば、交信相手に困ることはまずありません。
\ 迷ったらAMBEの定番機 /
仲間内だけ・限定運用ならRALCWIも選択肢
決まったメンバーだけで運用し、周囲に会話が混ざりにくい方がよいなら、RALCWIも選択肢になります。
ただし全員が同じRALCWI機を用意する必要があり、他社機や一般のAMBEユーザーとは交信できません。
拡張性の低さを理解した上で、限定用途と割り切って選ぶのが前提です。
アルインコを買うときは方式表記を必ず確認
アルインコはAMBE機とRALCWI機の両方があるため、購入時の確認が特に重要です。
たとえばDJ-DPS70はユーザーガイドにAMBE方式と明記されており、他社のAMBE機とも交信できることがわかります。
しかし、DJ-DP50EHはRALCWI方式と明記されているので、自社はもとより他社AMBE機と交信することはできないのです。







商品ページや仕様のAMBE/RALCWIの表記を見て、目的に合う方式かを必ず確かめましょう。
よくある質問(FAQ)
デジ簡の音声方式について、よく寄せられる疑問をまとめます。
デジ簡なのに通信できないのはなぜですか?
音声方式(AMBEとRALCWI)が違うと、同じチャンネルでも受信できません。まず両者の方式が一致しているかを確認してください。
AMBEとRALCWIは何が違いますか?
音声をデジタル化するコーデックが根本から異なり、互換性がありません。AMBEは世界標準、RALCWIはアルインコの一部が使う独自方式です。
どっちを買えばいいですか?
不特定多数や他社ユーザーと交信するならAMBEです。RALCWIはアルインコの一部だけの少数派で、限定的な運用向けです。
アルインコはRALCWIですか?
アルインコはAMBE機(DJ-DPS70など)とRALCWI機の両方があります。機種ごとに方式表記を必ず確認してください。
方式が違うと少しは聞こえますか?
声もノイズも一切入らず、完全な無音になります。アナログのようにかすかに聞こえることはありません。
方式は後から変えられますか?
基本的に機種固有で変更できません。購入時にAMBEかRALCWIかを選ぶことになります。
まとめ:迷ったらAMBE。買う前に方式を確認
デジ簡の音声方式について、最後に整理します。



「同じデジ簡なら通じる」という思い込みが、買い直しの一番の原因です。
特に理由がなければ主流のAMBE方式を選び、アルインコ機だけは方式表記を確認すれば失敗しません。








