この記事を書いた人(きのぴぃ)
部品メーカー広告宣伝記事・電気系の雑誌や無線雑誌の元ライターをやってました。
以前よりガジェット集めをやっており、本業(電子機器メーカー勤務)の知見を活かしたレビューが得意です。
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技術基準適合証明や工事設計認証の申請に携わるおいらが市民ラジオの測定方法に関して解説している。
市民ラジオ無線機の占有周波数帯幅測定は特殊
最近のアーティクルで市民ラジオの技適試験の内容を紹介したのだけれど、改めて測定方法を見ると、変な感じがしている。唯一A3Eが許可されているアマチュア無線、海上用DSBの占有周波数帯幅測定の方法と比較したい。
アマチュア無線(A3E) | 海上用DSB | 市民ラジオ | |
試験用入力条件 | 1kHz 60% | 1kHz 60%の入力レベルから10dBアップ | 1.25kHz 60%の入力レベルから10dBアップ |
測り方 | 「上限周波数」と「下限周波数」の差(kHz)として算出 | 「上限周波数」と「下限周波数」の差(kHz)として算出 | 搬送波振幅に対する上、下側帯波の最大振幅の電力比(dB) |
スペック | 6kHz以下 | 6kHz以下 | 25dB以上 |
上の表の通り、アマチュア無線は、1kHz 60%変調にしてスペアナのOBWモードで測定。海上用DSBは1kHz 60%の入力レベルから10dBアップして、スペアナのOBWモードで測定。
一方、市民ラジオは、1.25kHz 60%の入力レベルから10dBアップして、搬送波(無変調の状態)と上、下側帯波の5~10番目の内レベルが高いものとの電力比を求めて算出するという面倒な方法を取っている。
60%変調を10dBアップすると…
下の左の画像は、シグナルジェネレータを使って1.25kHzを60%変調を掛けたものをAM検波できるスペアナで観測した物。右は60%変調からオーディオ信号を10dBアップしたもの。
60%変調からオーディオ信号を10dBアップすると、130%変調というかなり深い変調が掛かっているようだ。
そうなると、占有周波数帯幅はどうなるのだろうか。
全電力の99%となる幅は、3番目の山(3.75kHz)も大きくなるため、上記のように約7.5kHzとなる。そうなると、占有周波数帯幅6kHzとならなくなる。
今度は、変調周波数を1kHzにして、100%変調を掛けてみたのが左側の画像。130%変調を掛けたのが右の画像。
今度は、130%変調を掛けても、スペックである6kHz以下に収まる。変調周波数を1kHzにすれば、市民ラジオでも占有周波数帯幅が6kHz以下に収まるはずである。それでいいように思える。
しかし、何故か、変調周波数を1.25kHzにして、態々占有周波数帯幅が広がるようにして測定させている。
市民ラジオの始めの規格ができたのは、ARIB(電波産業会)がRCR(電波システム開発センター)だった頃である。その頃の市民ラジオのメーカーであるソニー・松下が規格を決めるワーキンググループに入っていたはずなので、意味もなく、市民ラジオだけ変調周波数を1.25kHzにしているとは思えないのだ。
これより前のアーティクルでも言及しているが、市民ラジオの周波数は、一部のチャンネル同士が8kHz接近(26.968MHz、26.976MHz、27.080MHz、27.088MHz及び27.112MHz、27.120MHz)している。受信機のセラミックフィルターの特性を考慮すれば、丁度6.25kHzの音はフィルターによってカットされてしまう所のようなので、特性が25dB以上取れていれば、8kHz接近している周波数同士でも混信しにくくなるという考えからではないかと推測している。
それにしても、アマチュア無線の方は意外とスペックが緩くないかな…。
※市民ラジオは、昭和58年1月1日以降有効の免許状があるもの、スプリアス旧規格で技適を取ったもの、スプリアス新規格で技適を取ったもの以外は事実上使えない。
免許状自体が無効になっているので、免許状のないものが技術基準を満足しているかどうかを証明することができなくなってしまっている。中古などは出所や挙動が分からないので、使用すること自体はグレーと言えるかもね。