この記事を書いた人(きのぴぃ)
部品メーカー広告宣伝記事・電気系の雑誌や無線雑誌の元ライターをやってました。
以前よりガジェット集めをやっており、本業(電子機器メーカー勤務)の知見を活かしたレビューが得意です。
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技術基準適合証明や工事設計認証の申請に携わるおいらが市民ラジオの測定方法に関して解説しているシリーズのまとめ。
測定してみるぞ!
前のアーティクルでNGになってしまったデータを元にどのようになってしまうとダメなのかというのを紹介した。今回は、エピローグとして、電波利用ホームページにて配布されている難しそうな測定の話をしてみたい。
実際の測定方法は、下記、電波利用ホームページにあるのだけれど、全く測定器を使ったことのない人にとっては意味不明な言葉が羅列しており、閉口してしまうに違いない。
今回は、多少知識がある人用向けに書いているので、理解できない所もあるかも知れない。その辺は、ご容赦願いたい。
負荷条件は50Ω純抵抗がお勧め!
市民ラジオを測定する際、負荷条件をどうするか決めなければならない。負荷条件には、4つの方法がある。
筐体内部のローディングコイルを取り外した点とアース間に50Ω純抵抗負荷を接続する。アース点は、ローディングコイルの直近とする。
可変容量(最大約100pF)と直列の可変抵抗(約25Ω~300Ω)による整合負荷を最も短縮したアンテナの先端に接続する。アースは直接筐体に接続できない場合は金属板を用いて容量的な結合とする。
可変容量(最大約100pF)と直列の固定抵抗(50Ω)による負荷を最も短縮したアンテナの先端に接続する。アースは直接筐体に接続できない場合は金属板を用いて容量的な結合2とする。可変容量は送信出力最大点に調整される。
固定の容量(20pF)と直列の固定抵抗(50Ω)による負荷を最も短縮したアンテナの先端に接続する。アースは直接筐体に接続できない場合は金属板を用いて容量的な結合とする。
共役整合は、現在使用されていないそうだが、テレコムエンジニアリングセンター(東京)で、アンテナ端子のないトランシーバーに使っているのを見たことがある。共役整合・疑似的負荷の1/2はマッチング回路を接続することで検査できるようにしたものだ。
値云々を見る際、換算したりしないといけないので、非常に面倒。
しかも、専用の自動測定器を使えとある(その専用の自動測定器に関し、多くは語られていない。)。
それに比べ、50Ω純抵抗は、テスト用アンテナ端子に直接ケーブルを繋ぐ方法で、至って簡単。何も考えなくていい。一番簡単な「50Ω純抵抗」で検査を行うのを前提に話を進めたいと思う。
周波数の偏差
こちらは、周波数カウンターを接続するだけと至って簡単。それだけに、きちんと校正(較正)のされた周波数カウンターが必要だ。デジタル表示の付いたアマチュア無線機でも一応代用はできなくはないけれど、高安定の発振器があるものでないと厳しいかもね。
なぜなら、1kHz少々なので、意外と緩いようで厳しいのだ。古い機械だと、周波数がずれていることも。
・テスト用オーディオ信号は入れず、無変調で。
・念のため、マイク端子はノイズが入らないようにGNDとショート状態にすること。
※周波数偏差の出し方は、次の通り。PPM=10^(-6)
(測定周波数ー指定周波数)/指定周波数=周波数偏差
指定周波数が27.088MHz(4チャンネル)で測定結果が27.0875MHzの場合。
(27.0875-27.088)/27.088≒-1.85+10^(-5)=-18.5PPM となる。
空中線電力の偏差
こちらも「50Ω純抵抗」だと、パワーメーターを繋ぐだけなのだ。きちんと校正(較正)のされたパワーメーターであれば全く問題ない。注意点は、次の通り。
・パワーメーターのゼロ調整を行っておくこと。
・テスト用オーディオ信号は入れず、無変調で。
・念のため、マイク端子はノイズが入らないようにGNDとショート状態にすること。
占有周波数帯幅
こちらは、スペアナの操作が必要で、しかも市民ラジオの測定で一番手間がかかる所だ。肝となるセットアップをする前に、まず注意が必要。
50mWであれば17dBm位、100mWは20dBm。500mWは27dBmとなる。そのため、何も考えず電波を入力すると、内部回路で歪んでしまい、正常に測定できなくなる。必ず、スペアナのアッテネーターを入れておくこと。50mWの場合は20dB、100~500mWは30dBのアッテネーターを入れれば充分!
次にセットアップの方法だ。電波利用ホームページの測定方法などは、サラッと書かれているので、簡単にできそうなのだが、実際はそんなに甘くないのだ。
【セットアップの手順】すでにスペアナにトランシーバーを接続しているのが前提
その際、低周波発振器のレベルが見られるようバルボルなどdB表示で値を直読できるメーター類を並列に繋いでおく。
キャリアのすぐ横(1.25kHz離れた所)に出てくるスペクトラムにデルタマーカーでマーカーを持ってくる。右(上側帯波)でも左(下側帯波)でもOK。
先程デルタマーカーで合わせた所が、-10.5dB位になるよう低周波発振器の出力を上げる。トランシーバーのマイクアンプの直線性がよければ、そのポイントで60%変調出ていることになる。
STEP3の低周波発振器を60%変調になるレベルから、更に10dB(3.14倍)上げる。例えば、10mV(-40dBV)で60%変調となっていれば、31.4mV(-30dBV)に合わせれば10dB上げたことになる。
—セットアップが終われば、今度は測定に入れるが、ちょっとしたコツがいる。
【占有周波数帯幅測定の手順】
セットアップした状態で、電波のキャリアに再度マーカーをセット。何dBmであるか値を読み取る。
トランシーバーによっては、キャリアの両サイド1.25kHz毎にスペクトラムが沢山出てくるはず。左側(下側帯波)に出ているスペクトラムの5番目~10番目が見えるようスペアナの中心周波数を下げる。
スペクトラムの5番目~10番目の中で一番山が高い物が何dBmであるか値を読み取る。
今度は、右側(上側帯波)に出ているスペクトラムの5番目~10番目が見えるようスペアナの中心周波数を上げる。
スペクトラムの5番目~10番目の中で一番山が高い物が何dBmであるか値を読み取る。
※(電波のキャリア)-(スペクトラムの5番目~10番目の中で一番山が高いもの)が25以上になることを確認する。
例 (電波のキャリア)が0dBm、(スペクトラムの5番目~10番目の中で一番山が高いもの)が-30dBmだとすると、0ー(-30)=30dBとなる。
一応、総務省推奨の手順通りにするのであれば、上記の通りになるのだけれど、スペクトラムの5番目~10番目の中明らかに5番目の山が高いのであれば、Spanを6.25kHz(あるいは10kHz)ではなく20~30kHzに幅を広げて、5番目の上下側帯波が見えるようにしてやっても支障はない。
何故態々スペクトラムの5番目~10番目の中で一番山が高い物を見つけるのかというと、低周波発振器を60%変調になるレベルから、更に10dB上げると、マイクアンプの回路によっては歪んでしまうからなのだ。
市民ラジオは、3kHzの周波数の音まではよしとするけれど、それ以上の周波数の音は電波が広がり過ぎるのでよしとしていない。5番目の山というのは、6.25kHzという本来出てほしくない所だ。
市民ラジオの周波数は、一部のチャンネル同士が8kHz接近(26.968MHz、26.976MHz、27.080MHz、27.088MHz及び27.112MHz、27.120MHz)している。受信機のセラミックフィルターの特性を考慮すれば、丁度6.25kHzの音はフィルターによってカットされてしまう所のようなので、特性が25dB以上取れていれば、8kHz接近している周波数同士でも混信しにくくなるという考えからではないかと推測している。
副次的に発する電波等の限度
疑似負荷などマッチング回路を使った測定方法だと、正確にレベルが読み取れないので、空中線電力の値から、キャリアとスプリアスの差から割り出すのだとか。こちらも「50Ω純抵抗」で検査する方が、値を直読できるので簡単。
・測定中は受信状態にし、電波を止めること。
スプリアスを監視して、スペクトルの山が高い方の値を読み取る。4nW(約-54dBm)より値が小さければOKだが、それより高い場合は残念ながらNGとなる。
スプリアス領域における不要発射の強度
前のアーティクルに書いたのだけれど、昔と違い、スペックが厳しくなってしまった。以前は1mW(0dBm)出ていてもOKだったものが、50uW(約-13dBm)まで落ちていないと失格となってしまうのだ!
以前、そのままでも技適合格できていたものが、全く通らないケースが出てきており、ローパスフィルターを付けるなどの対策が必要となっているので、有志もその辺苦慮しているようだ。
さて、こいつを測る際、まずスプリアスの探索を行う必要がある。
次は、スプリアスのレベルを測る。
以上が総務省推奨の測定方法だったけれど、スプリアスを探索してから、細かくレベルを読み取るなどかなり面倒。フルスパンにして、メインキャリアとスプリアスの差を見ても差しさわりはない。目安としては、次の通りだ。
・空中線電力50mWの場合は、差が30dB以上。(Y軸目盛3マス)
・空中線電力100mWの場合は、差が33dB以上。(Y軸目盛3マス少々)
・空中線電力500mWの場合は、差が40dB以上(Y軸目盛4マス)
それ以外の空中線電力の場合は適宜計算するように。
帯域外領域におけるスプリアス発射の強度
帯域外領域とは、占有周波数帯幅6kHzの2.5倍である上下15kHzの幅を指す。この中に変なスプリアスがいないか確認するのだ。こちらもまずは、スプリアスの探索から始めることになる。
次は、スプリアスのレベルを測る。あー、めんど。
面倒なので、スプリアスの探索の状態で、メインキャリアとスプリアスの差を見ても差しさわりはない。目安としては、次の通りだ。
・空中線電力50mWの場合は、差が17dB以上。(Y軸目盛2マス近く)
・空中線電力100mWの場合は、差が20dB以上。(Y軸目盛2マス)
・空中線電力500mWの場合は、差が27dB以上(Y軸目盛3マス近く)
それ以外の空中線電力の場合は適宜計算するように。
50mWであれば2マス以上、500mW3マス以上スプリアスが離れていれば問題ないと言える。
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