この記事を書いた人(きのぴぃ)
部品メーカー広告宣伝記事・電気系の雑誌や無線雑誌の元ライターをやってました。
以前よりガジェット集めをやっており、本業(電子機器メーカー勤務)の知見を活かしたレビューが得意です。
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技術基準適合証明や工事設計認証の申請に携わるおいらが市民ラジオの測定方法に関して解説している。
型式検定の市民ラジオはNGになりやすいから
前のアーティクルにて型式検定の市民ラジオの一部はそのままではアウト!と書いたけれど、実際にはどのようになっているのだろうか。
テレコムエンジニアリングセンターの前進である無線設備検査検定協会(東京)では、型式検定の市民ラジオに関し、受け入れ試験というのを行った上で、技術基準適合証明試験を続行するかどうか決めていた。
実は、おいらも何台か不合格をいただいており、たまたま記念にとデータのコピーをいただくことができたのだ。それを元にどんなデータが悪いのかというのを見てみたい。
市民ラジオの検査スペック
検査項目 | スペック |
周波数の許容偏差 | ±50PPM(大体±1kHz少々) |
占有周波数帯幅(OBW) | (上/下側帯波)夫々25dB以上 |
帯域外領域におけるスプリアス発射の強度 | 1mW(0dBm)以下 |
スプリアス領域における不要発射の強度 | 50uW(-13dBm)以下 |
副次的に発射する電波の強度 | 4nW(約-54dBm)以下 |
空中線電力 | 指定値0.5W以下 許容偏差:+20%/-50% |
帯域外領域におけるスプリアス発射の強度を見てみると、1mW以下と結構出ていてもセーフということで、意外と甘かったりして…。
受け入れ試験結果
では、不合格になったトランシーバーのデータを見てみよう。RP7700というのは、三洋電機がまだありし頃、エネループだけではなく、テレビやラジオなど色々な家電を発売していた時にBCLラジオ+トランシーバー(ラシーバー)という触れ込みで売られていた画期的な製品だ。
秋葉原を散策していた時、偶然見つけたものだ。子機のトランシーバーもちゃんと付いている。昭和レトロと言えよう。
そんな、レトロ感あふれる本機は、残念ながら、門前払いとなってしまった。単なるBCLラジオと化しているのが、実にもったいない…。
まず、周波数の許容偏差は-11.44PPMと古い機械にしてはバッチリな値。
次は、スプリアス。この頃は帯域外領域/スプリアス領域なんていう概念がなかった。確かこの頃のスペックは、1mW以下というスペックだったはずなので、余裕でパス。でも、今じゃアウトだよね。これ。
スペアナの分解能のため、近接周波数で測定する帯域外領域における不要発射の強度は、上のグラフから読み取ることはできないので、何とも言えない。
今回のものは、13.7MHz/40.8MHzという意味不明な周波数のスプリアスが出ているので、近接にも何かしらスプリアスが出ていそうな悪寒…いや予感がする。
次は、占有周波数帯幅を見てみたい。Occupied Band Width、略してOBWだ。通常であれば、何kHzとかいう測定値になるのだけれど、市民ラジオに関しては検査方法が異なるため、測定値は(dB)で表されている。
なぜ、こういった測定方法を用いているのか、後日にでも検証してみたい。25dB以上なので、問題なし!
最後に、副次的に発射する電波の強度。これは受信状態にして、アンテナ端子からどのくらいの不要電波が出ているかを見ているもの。ラシーバーの親機・子機共にコイツのせいで不合格になってしまった。
一番強力なものは、26MHz帯で2442316μμW(pW)=2.4μW(約26dBm)も出ているのだ。コストを下げつつ、シングルスーパー受信機で感度を稼ぐために、局部発振器の出力を頑張ったのだろう。
次に大きいのは、局発26MHz帯の2倍、3倍で、局発の詰めが甘かったか…。
ちなみに、空中線電力は、本試験でないと測ってもらえないので、データはないけれど、スプリアスのデータから推測すると次のようになる。
●空中線電力を50mW(=50000uW)と仮定する。153.32uWで切りがよく26.0dBとなっているのでそれを参照し、比率を出してみる。
10*LOG(153.32/50000)≒約25(dB)
●次に空中線電力を60mW(=60000uW)と仮定すると、
10*LOG(153.32/60000)≒約26(dB) うん。数値としては丁度いい塩梅!
60mWならば、丁度上限20%となり、OKかNGの狭間にあると言えるが、もう少し低いかも知れない。
意外とスペックがゆるゆるだったり、厳しかったりする箇所があるので、市民ラジオを自作する方は、気合を入れて製作してくださいね。
これで終わりではなく、実はまだ続く…。