この記事を書いた人(きのぴぃ)
部品メーカー広告宣伝記事・電気系の雑誌や無線雑誌の元ライターをやってました。
以前よりガジェット集めをやっており、本業(電子機器メーカー勤務)の知見を活かしたレビューが得意です。
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登録修理業者制度のいきさつ
携帯電話端末(特別特定無線設備)の修理をする場合、そのメーカーに修理を依頼することが一般的だけれど、スマートフォンの普及に伴い、製造業者以外の第三者である修理業者が修理や交換を行う事例が多く見かけるようになった。
しかし、メーカーでない第三者が携帯電話端末を修理することによって、修理後の携帯電話端末(特別特定無線設備)の性能が電波法で規定している技術基準に適合するかどうか不明確になる等の点が懸念されていた。
そのようなことから、平成27年に修理の箇所及び修理の方法が適正で修理後の無線設備が技術基準に適合していることを第三者である修理業者自らが確認できるなど電波法で定める登録の基準に適合する場合には、総務大臣の登録を受けることを可能とする登録修理業者制度ができたというもの。
制度としては惜しいぞ
メーカーではない業者が修理できるようになったのは、大変喜ばしいことではあるのだけれど、「非常に惜しい」という感想。何が惜しいかというのは…。
特別特定無線設備しか修理できない。
この特別特定無線設備というのは、「特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則」という法律の第二条第二項に明記されている。
※ここでいう法とは、電波法である。前項というのは、特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則を指す。
簡単にまとめると、次の通りだ。
- デジタルコードレス電話
- 携帯電話端末
- PHS(及び無線LAN内蔵のもの)
- 陸上移動局
- 小電力データ通信システム
- 超狭帯域無線システム
- 5.2GHz高出力データ通信システム
- 特定小電力無線の一部(920MHz・57GHzを使用するもの)
CB無線や特定小電力無線の無線電話は、残念ながらない。つまりは、上記のカテゴリー以外修理業者として登録できないので、登録していないモグリの修理屋さんは、法的にアウトということになるのだ(修理後に技術基準適合証明を取れば、その限りではない)。
特別特定無線設備には特権があり、技術基準適合自己確認という制度を使うことができる。これは、海外の無線設備と同様で、メーカー内で日本の技術基準に適合しているのを担保しますよというもので、上記の表のカテゴリーのように無線機の数が多く出るものに関して有効に使われている。
業界団体からは、出力が小さいものから緩和して特別特定無線設備に入れてはどうかという意見も出ているようだが、まだ実現に至っていないようだ。
上記以外に、もう1つ残念ポイントが。
電波の質が変わってしまうような定数変更や調整などはできず、簡易のものの交換しかできない
登録修理業者が修理できる箇所は、平成27年に制定された登録修理業者規則なる法律によって定められている。
街中のスマホ修理屋がやっている簡易な部品交換だけで、再調整をするとかいうのはできないのだ(殆どのスマホは、昔ながらの半固定抵抗を回して再調整するなんていうような構造になっていない)。
所謂、電波の質が変わらない箇所であれば修理を許可するということで、この法律、どちらかというと街中のスマホ修理屋を救済するような格好となっている。
再調整するなどメーカー並みの修理を行おうとすれば、その修理業者が技術基準適合証明を取り直さなければならないことになるのは明白ですな。
基板交換しなければならない位の故障だったら、新しいのを買ってねということになるだろうし、そもそもメーカー自体も修理用サービスパーツとして基板のアセンブリーなんぞは出さないものね。
「登録修理業者は惜しすぎるぞ総務省!」ということで。